映演労連 '13 春闘方針

2013年1月29日 映演労連第1回中央委員会

憲法改悪阻止、平和と生存権をかけた闘いとして'13春闘を闘い抜こう!
産別春闘をさらに進め、すべての映演労働者の労働条件向上と雇用確保のために闘おう!

I. '13春闘をめぐる情勢

1. 政治・経済の情勢

 国民の生活重視の公約を掲げて政権交代を成し遂げた民主党政治は、普天間移設問題や、先の震災や原発事故の処理でも政治主導を発揮することなく、野田政権になって消費税増税法案やTPP交渉への参加意欲など、アメリカや経団連のいいなりに終始、その結果昨年12月の総選挙によって解党的惨敗を喫した。国民を裏切った民主党に対する怒りが増幅された選挙結果となったが、その投票率は59.32%と戦後最低の投票率であり、また1票の格差を解消しない「違憲」状態での選挙であったことも無視できない。

 「強い日本を取り戻す」とのスローガンを掲げ、持論である憲法改悪や自衛隊の国防軍への改編、集団的自衛権の行使などウルトラ右翼的な政治姿勢を取る安倍晋三率いる自民党が294議席を獲得し、3年3ヶ月ぶりに自公連立政権が復権した。勝因は、国民からの信頼を裏切った民主党の自滅と、小選挙区制という選挙制度によるものだが、自民党の比例投票率は27.62%に過ぎず、国民は決して自民党に期待して一票を投じた訳ではない。

 既存政党を打破する目的で結集した「日本維新の会」や「みんなの党」などのいわゆる第三極といわれた政党も、政局を握る立場にまでには躍進した。

 逆に主要な争点とみられた貧困・格差の解消や雇用問題、脱原発などは争点から逸らされ、それらを公約に掲げた「日本未来の党」「日本共産党」「社民党」などの政党は残念ながら議席を減らした。国民の期待に蓋をし、デフレを克服し経済を立て直すという経済至上主義が国民の声である、と喧伝したマスコミの罪も大きい。

 政権の座に着いた安倍首相は、まずデフレ・円高対策に着手した。日銀に政治圧力をかけ、消費者物価の2%上昇というインフレターゲットの導入と大胆な金融緩和を決めた。いわゆる「アベノミクス」といわれる経済政策に市場は反応し、株価は大幅に上昇した。しかしその政策はエコノミストの間でも疑問視され、選挙前には経団連からも批判された。赤字国債を発行し、過剰な公共事業のバラ撒きによって景気を回復しようとする手口は、過去自民党がやって来たことの繰り返しである。また逆に極端なインフレに移行すれば、日本社会に大きな不況をもたらす危険性がある。

 円安になると原発事故以来、海外から天然ガスの輸入に依存しているエネルギー政策や、国内の食料自給率も2010年ではおよそ39%と、多くを海外から輸入している現状にも影響し、生活物価の高騰は国民の生活に大きな打撃を与えることが必至である。先に可決された消費税増税法案は、経済の状況によっては施行を延期する「経過処置」が盛り込まれているが、消費税を上げたいがために景気対策をやっきになっているとも揶揄されている。

 また、デフレ脱却には労働者の賃上げこそが最良の方法だが、日本経団連は賃上げを敵視し、安倍政権もそれに追随している。生活物価が上がっても賃金が上がらなければ、国民生活は崩壊し、最悪の事態になる。その上、生活保護基準の引下げが強行されれば、最低賃金はもちろん、様々な社会保障基準の見直しにも波及しかねない。

 安倍政権は、今夏に行われる参院選までは景気対策を中心とし、タカ派的な政策の実行は控え目にした「安全運転」で行こうとしているようだが、すでに社会保障制度の大改悪やTPP参加では衣の下の牙が見えている。参院選で勝利し、ねじれ状態を解消し安定した政権を勝ち取った場合、さらなる危険な選択に踏み切ることは目に見えている。「強い日本を取り戻す」挙句、他国から馬鹿にされるような国にならぬよう、私たちはよりいっそう厳しい目で一票を投じる信念と強い勇気を持って行動する必要がある。

2. '13春闘をめぐる経済界、労働界の動き

(1) 経済界の動き

 日本経団連は「決断と実行の年に」をスローガンに掲げた年頭の挨拶では、TPP参加は待ったなし、法人実効税率のさらなる引き下げを、などと大企業の利益優先と言える主張を全面に押し出した。

 大手企業は267.5兆円もの内部留保という金余りの状態が続いているが、富裕層と大手企業の内部留保に1.8%の課税をするだけで、庶民の生活を圧迫する消費税増税が止められる事実には目も向けようともせず、消費税増税のみが国の財政難を救えるかのように流布し、真の目的である法人税の更なる減税を目論んでいる。円高を口実とした海外への生産拠点移転や、さらには電力不足による経済活動への影響という口実で原発再稼働までも主張する。被災者、一般市民、中小企業の立場を顧みない、正に政府も巻き込む惨事活用型資本主義の具現化は止まらない。

 先ごろ発表した13春闘の経営側指針となる経労委報告では、「定昇制度の見直しを聖域にすべきではない」とした原文を削除し、「ベア」についても「協議する余地はない」から「実施する余地はない」とトーンを修正したが、その背景には一部の財界からも「景気回復に水を差しかねない一方的姿勢」との批判があったためと言われている。しかし、賃金引き下げ・抑制の姿勢に変わりはない。

 また、改正高年齢者雇用安定法が4月から施行されることから、現役世代の賃金抑制で給与原資を確保する「賃金カーブの見直し」が必要と位置つけた原案を発表した。この論理は労働者を「高齢者」と「現役世代」という二つの層を作り出し、「世代間対立」を煽り、労働者の分断をはかる危険性もはらんでいる事も留意すべき点だ。

(2) 労働界の動き

 連合の春闘方針では、痛んだ雇用・労働条件の復元を図り、働くことを軸とする安心社会の実現をめざすとしている。経済闘争については定期昇給を確保した上で、給与総額の1%引き上げ要求の柱とするとし、ベースアップと言う具体的な言葉の使用は避けた。しかし今回は、方針で明確に「賃上げ」という言葉も挿入し、賃金面で改善が必要な組合における純ベアの取り組みを一層後押しするに姿勢はみせたが、結果としてベースアップについては4年連続で統一要求を見送る内容となった。
 昨年の春闘で大手産別がベア要求を見送り定昇確保に動いたなか、連合内部の有志の組合ではベア獲得を目指す「有志共闘」の戦術に出て、一定の成果を残した。今春闘でも「最大のヤマ場」の前段にベア回答を引き出し、相場形成の推進をはかることを目指すとしている。

 全労連・国民春闘共闘は、「変えよう 職場・地域と政治、勝ち取ろう 賃金・雇用・くらしの改善」をスローガンに、国民に犠牲を押し付ける一方で、一握りの金持ち、大企業を優先させる政財界への「反撃」を特徴とした春闘方針を決定した。
主要な課題については、(1) 失業率の上昇、青年層の雇用悪化、年金と雇用の接続問題、労働法制の改正などに対し「解雇、失業に反対し、雇用の安定」を強めることを提案、(2) 格差と貧困の是正は喫緊の課題であり、賃金低下に歯止めをかけるために「賃金の改善、底上げ、格差是正」に取り組み、(3) 「労働時間改善などの良質な雇用確保」、(4) 「消費税増税、TPP参加阻止、原発ゼロの日本の実現を国民共同でめざす」、(5) 「改憲策動に反対し、核廃絶と安保破棄」、(6) 政治の民主的転換を目指すこととした。
 春闘期から「くらしを守る総行動」と位置付け、全国「50万人総行動」の決起を呼びかけるなど、昨年にも増して経済闘争と政治課題を前面に押し出して闘う姿勢を鮮明にしている。

3. 映画・映像産業の情勢

(1) 映画産業の情勢

 映連発表による全国映画概況によると、2012年の入場人員は1億5515万9千人(前年対比107.2%)、興行収入は1951億9千万円(前年対比107.7%)となり、東日本大震災の影響を受け過去10年で最低の成績となった2011年の1811億9700万円は大きく上回るものの、2010年に過去最高の興行収入2207億3700万円はいうに及ばず、2006年から2009年平均2005億6200万を割り込む厳しい結果となった。

 それでも、10月末までの邦画、洋画配給主要13社の累計興収が1491億7434万円と、前年対比103.6%で推移していたことを考えると、11月17日に公開された「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」と12月15日公開された「ワンピース フィルムZ」のアニメ2作品が、期待以上に数字を大きく伸ばし持ち直したと言える。

 ここで邦、洋それぞれの作品別興収上位10作品について見てみたい。邦画においては、今年もTV局主導の作品が存在感を示した年となり、フジテレビ作品の「BRAVE HEARTS 海猿」(73億3000万円)、「テルマエ・ロマエ」(59億8000万円)、「踊る大捜査線 THE FINAL新たなる希望」(59億円7000万円)がトップ3を独占。8位の「ALWAYS三丁目‘64」が興収34億9000万円を、10位の「映画 怪物くん」が興収31億3000万円を記録するなど、東宝配給によるTV局主導の映画が昨年も大きく数字をのばしている。

 くわえて2012年はアニメの健闘が挙げられる。上位10作品のうち、定番シリーズである「ドラえもん」(36億2000万円)、「ポケットモンスター」(36億1000万円)、「名探偵コナン」(32億9000万円)が今年も安定感のある数字をたたき出す一方、「時をかける少女」「サマーウォーズ」で注目を集めた細田守監督を起用した意欲作「おおかみこどもの雨と雪」が42億2000万円の大ヒットを記録。ジブリ作品の公開がないにも関わらず、30億円を突破したアニメが5本ランクインしたのはここ10年では昨年だけであり、本作でスタジオジブリに続く新たな国民的アニメブランドの確立できたことで、東宝のラインナップの更なる充実が予想される。

 2012年は、上位10作品すべてが30億円を超え、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」を除いたすべてが東宝配給作品という結果になり、東宝ひとり勝ちの傾向に拍車がかかっている。ヒットの目安である10億円を超える作品が26作品、20億円以上が15作品、30億円以上が9作品で、年間700億円を超える成績を残し、東宝のシェアは37〜38%となって磐石の度合いを増している。

 一方、洋画に目を転じてみると、こちらは悪い方向で近年の傾向に拍車がかかっている。10作品中、定番作品とも言えるシリーズ作品、続編が8作品を占めているにもかかわらず、ヒットの規模が縮小傾向にある。1位の「ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル」こそ前作を若干上回る54億円を突破するものの、ついで「バイオハザードVトリビューション」の38億円、「アベンジャーズ」の36億円といずれも期待を下回っている。もっとも顕著な作品としては、前作が71億円を超え、興収目標を100億円に掲げていた「アメイジング・スパイダーマン」が31億6000万円と低調な結果になったことである。

 結果、邦画興収は1281億8100万円(前年比128.8%)で、洋画は670億9000万円(前年比82.1%)まで落ち込んだ。これは興収ベースで発表を始めた2000年以降、邦画が最高だったのに対して、洋画は最低となり、「邦高洋低」の傾向に一段と拍車がかかった。興収の邦洋のシェアは、2011年が邦画54.9%、洋画45.1%だったのに対して、2012年は邦画が65.7%、洋画が34.3%となり、更にその差が広がった。

 映画スクリーンのデジタル化は驚くべき速度で進み、2011年末は全体の60%であった設置数が、2012年末にはなんと88.1%に達した。昨年は浅草名画座をはじめ中小の老舗劇場は閉館が相次ぎ、27館が姿を消した。一方、シネコンの新規出店数も4年連続で1ケタにとどまっており、2012年末時点での全国映画館数は、全体としては開業27スクリーンに対して閉館76スクリーンで、2011年に比べて49スクリーン減り(2年連続で減少)、3290スクリーンとなった。

 映画業界では積年の目標として、入場者数2億人を掲げてきたが、1971年の2億1675万人を最後に40年間にわたって2億人を下回ったままである。

 デジタル化を歓迎する声に、経費削減や自然環境への貢献とともに、配給が容易になり、公開本数も多くなりお客様に多岐にわたる作品を提供できるようになった、という声がある。

 しかしながら、近年の映画界の状況を見ると疑念を抱かざるを得ない。マーケットシェアにおいて圧倒的優位に立つ東宝が勢いを増すのとは対照的に、デジタル化の波の乗れない中小劇場の閉館や、資本の論理で推し進めたデジタル化が、米イーストマン・コダック社の連邦破産法11章適用申請、富士フイルムの撮影用・上映用フィルムの製造・販売中止を招いた。

 映画フィルムの生産中止が、フィルム現像を担う東京現像所や東映ラボ・テックのリストラ「合理化」につながっていることを考えると、デジタル化はフィルム映画文化の崩壊を招くとともに、私たち映画労働者の職域を奪いかねない諸刃の剣であることを認識しなければならない。

 私たち映画労働者が先人から引き継いだ豊かな映像文化を次の世代にも残せるように「映像文化の維持発展」のために今こそ議論を深めていく必要があるだろう。

(2) 映像ソフト業界の状況

 JVA(日本映像ソフト協会)発表の2012年1月から11月のビデオソフト売上累計は2,237億 8,500万円(前年同期比96.5%)で、内訳はDVD売上が1,624億7,300万円(構成比72.6%)、BDが613億1,200万円(構成比27.4%)。

 DVDにおいてはセルが979億3,000万円で前年同期比91.0%、レンタルは634億5,400万円で前年同期比91.2%と、ピークであった2004年より連続しての下降傾向が続き、厳しい状況が続いている。

 BDにおいてはセルが575億7,300万円で前年同期比112.7%、レンタルが37億1,000万円で前年同期比146.1%と増加傾向にある。

 リリースタイトル面では、2012年11月度を見ると、新作BDはセルが前年同月比116.6%の274タイトル、レンタルは前年同月比140.5%の59タイトルが発売された。このBDのタイトル増加の理由は、BDの主力であった洋画ジャンルに加え、アニメや邦画分野でもBDをリリースする傾向が高まったこと、また過去の名作をBD−BOXなどに仕様を変え、再リリースする施策が多くなってきていることが挙げられる。しかし、BDでの新作のリリース増加傾向もビデオソフト産業全体をカバーし、売上増加を達成するまでには至っていない。

 業界全体を俯瞰し、特にレンタルビデオに着目してみると、レンタルDVDの数量は28,634,000枚(前年同期比111.1%)、レンタルBDの数量は1,681,000枚(前年同期比147.2%)と伸びている。しかし、数量は増加しているにも関わらず、売上が減少していることからも分かるように、薄利多売傾向が進んでいる。

 この一因はTSUTAYA、GEOの二大レンタル店の価格競争が引き金となり、レンタルビデオ店全体に価格破壊の傾向が強くなったことがある。また、TSUTAYAは「アメイジング・スパイダーマン」を独占流通させるなど価格面以外の作品ラインナップなどで同業他社を引き離す攻勢を開始した。この事例以外にも洋画の買付において、従来の業界の慣行を覆すような独占的な権利行使を目的とした作品獲得合戦が起こることが予期され、引き続き、監視していく必要がある。

 映像コンテンツの楽しみ方が多様化する中、「BDやDVDを購入する・レンタルする」というハードルはますます高くなってきており、今後も販売店・レンタル店の薄利多売・寡占化はますます激しくなるであろう。

 このような状況を打破するためには魅力的なコンテンツの拡充はもとより、ネット配信やモバイルサービスなど新規の映像メディアとの積極的な協力体制を築き、各々のメディアが持つメリットを提供し合い、デメリットを補完しないながら、付加価値を高めていかなければならない。

 また、現在、違法視聴され、本来得られるはずの利益を確実に取り戻していく必要性がある。DVDなどのDRMを回避したリッピング行為を違法とするなどの内容を含む改正著作権法が2012年10月より一部施行され、違法ダウンロードにも刑事罰が科せられることとなった。しかし、現状この法改正による具体的な成果は聞こえてきてはない。この改正著作権法を下地とし、いかに違法配信や海賊版ソフト流通に歯止めが掛けられるか、その動きを見守っていく必要がある。

(3) アニメ業界の状況

 2012年は劇場アニメの盛況が印象的な一年となった。興収30億円を超える大ヒット作品が5本もあり、中小規模の劇場公開でも好調な業績を残す作品が多かった。年末から公開された「ONE PIECE FILM Z」は70億円に迫っている。2013年公開予定の国内劇場アニメ作品は30本を超え、2012年と同じかそれを上回る可能性が高い。

 就学前児童に向けたアニメ映画の増加、という新しい流れもある。シネコンの多角的な活用も反映し、さらに上映にダンスなどを持ち込み、ライブイベント化することでこれを可能にしている。

 このように好調な劇場アニメだが、すべて順風満帆というわけでない。オリジナル作品、作家性の強い大作映画が減少し、テレビ放映で人気を得たヤングアダルト向けの劇場アニメが急増している。ヒット作が出る一方で、興行が期待値に届かなったケースも少なくない。

 2013年のテレビアニメ制作本数が、すでに2012年を上回る勢いであることが伝えられ、これに劇場アニメの制作も加わると、2013年にはアニメ制作がかなり増加することになる。大量生産でクオリティ低下すれば、アニメの観客の失望を招くことになる。

 日本アニメの海外の状況は、2012年も日本のカルチャーの海外進出=クールジャパンの旗手として語られることが少なくなかったが、一方で、いまだメインストリームの文化に入れていない、人気がビジネスにつながっていないとの認識も広がっている。

 アニメ産業全体の景況は、テレビアニメ制作本数の反転やソーシャルゲーム関連、イベント関連の盛況で市場規模は上向きに転じている。2012年以降、アニメ製作出資の拡大を明らかにしている企業も多く、比較的安定した状況だ。

 しかし、その景況はアニメ制作現場の労働者には還元されていない。依然として低賃金の長時間労働、不安定な雇用が蔓延しており、労働基準法を省みない企業が目立つ。新規雇用者の定着率も絶望的である。

 こうした中、2012年にはアニメ背景会社スタジオ・イースターの労働者が声をあげ、残業代不払い、労災、一方的な賃下げ、パワハラなどについて東京地裁に提訴した。これによってアニメ業界の過酷な労働実態に社会的関心が集まり、新宿、池袋の両労基署でアニメ制作会社への集団指導も行われた。スタジオ・イースターの団体交渉でも労働条件の改善が進み始めた。アニメ業界の長年にわたる過酷な労働環境は、漸く改善の動きを見せている。

4. 演劇界の情勢

 歌舞伎座の新開場が4月に迫る中、1月に入ってようやく公演内容が公開された。四月から六月まで三部制での上演、料金は1等席20000円、2等席15000円、3等A6000円、B4000円というかつてない高額設定で、明らかにこの3カ月で稼ぎまくろうと言う意図がみえる。

 正月の歌舞伎界は、浅草の花形歌舞伎、新橋演舞場、国立劇場、加えて1月9日に閉館となった前進座劇場ファイナル公演と四座となり活況をみせた。しかし4月以降、新橋演舞場からは歌舞伎公演が消え、7月までと10月は公演予定が出されているものの、8・9・11・12月は上演カレンダーが空白のまま新年を迎えた。しかも、今まで演舞場で上演のあった「新感線」も、昨年開場した渋谷ヒカリエの中にあるシアターオーブに移っていった。これからミュージカル系の公演は、帝劇かオーブに集中していく可能性が高い。演舞場の今後が興行界にどう波紋を呼ぶか、気になるところである。

 また、明治座は創業140年をうたったキャンペーンで歌舞伎座との対抗意識を見せている。1月から韓国のミュージカルで新しさを打ち出してはいるが、以後は藤山直美、北島三郎など従来の座組みが続く、しかも現段階では7月までのラインアップしか公表されていない。

 帝劇は、ジャニーズ公演の他は海外ミュージカル、中でも「レ・ミゼラブル」は4月から7月のロングラン公演となる。新演出、新キャストという打ちだしで、映画の好評もバックにこちらも4月からの歌舞伎座開場に照準を合わせているのは明確だ。商業演劇の分野でどう興行収入の変化が現われるかは、映演労連にとっても大きな関心事となってくる。

 日本劇団協議会や児演協などの劇団では、昨年の衆議院議員選挙の結果、復活した自民党政権がどういう文化政策をとってくるか注視している。自民党は、選挙中にはほとんど文化政策を語らなかった。明確に財界本位、軍備拡張に動いている自民党が、さらに文化予算を削減してくる可能性は十分にある。

 昨年発覚し問題になっている、渋谷の青山劇場・青山円形劇場の閉鎖などの動きに見られるような状況をいち早く察知できるよう、強くアンテナを張っていくことが必要だろう。

 また、昨年施行された「劇場法」がどう具体化されていくのかも、よく見極めていくことが求められる。

 各劇団が協力共同関係を続けてきた市民劇場・演劇鑑賞会や子ども劇場・おやこ劇場の会員数が、さらに減少傾向にあることも大きな問題となる。全国演鑑連の今年11月の集計によると、2011年の会員数は前年より7,000人を減らし、約17万人となっている。この数字は、10年前と比較すると68,000人を減らしている。ここには、全国民的に進んでいる個人年間収入の低下、購買力の低下が、そのまま鑑賞運動へ反映している。

 中でも収入の低下に加え、物価上昇、消費税率のアップがなされれば、更に鑑賞運動への影響があらわれ、劇団経営を大きく圧迫していく。今年の賃金闘争は、今までにも増して文化運動に直結する闘いとなると思われる。

II. '13春闘の課題と取り組み

1. '13春闘の基本的な構え

  1.  憲法改悪、大震災、原発事故と放射能汚染、TPP、社会保障改悪と増税、映演産業と映演各社の経営危機などに立ち向かい、平和と生存権をかけた闘いとして2013春闘を闘う。
  2.  本格的な「産別春闘」をさらに一歩進めるとともに、単組の闘いも強化する。そして正社員中心の従来型の春闘から、非正規労働者を含めた新しい形の「産別春闘」構築をめざす。

2. '13春闘の基本要求

  1.  生計費原則に基づいて活発な要求討議を行い、生活防衛、生活向上に足る賃上げ、一時金の獲得をめざして'13春闘を粘り強く闘っていく。
  2.  「映演労働者に誰でも10,000円以上」の産別賃上げ要求に基づいた大幅賃上げ、すべての時間給労働者に時給100円以上の賃上げを勝ち取る。
     一時的な「利益減少」に惑わされず、内部留保や溜め込んだ資産、含み資産を明らかにするなど、正確な経営分析に基づいて賃上げ、一時金の抑え込みをはね退ける。
  3.  定昇制度を確立している企業に対しては定昇の維持とベースアップを要求する。また、4月昇給を実現していない企業に対しては直ちに4月昇給を実現するよう要求する。
  4.  産別最賃制は、月額16万円、日額8,000円、時給1,000円(=いずれもキャリア・ゼロの場合)とし、映演各企業との協定化を迫る。企業内最賃制の確立を各単組の春闘要求書に盛り込む。
  5.  映演各社の労働条件調査を進めて「映演労連2013春闘要求書」と「産別統一労働協約案」を充実させ、映演産業の労働諸条件、諸制度の均一化と底上げをめざす。「パワハラ防止規定案」の改訂版を作成するとともに、「パワハラ防止規定」の制度化をさらに進める。
  6.  派遣切りや改正労働契約法を悪用した有期雇用の雇い止めを許さず、非正規労働者の雇用と権利を守る闘いに全力をあげる。
     映演産業を支えるフリー契約者、非正規労働者がまともに生活できる労働条件をめざして、賃金アップ、均等待遇の実現、労働基準法適用、社会保険の適用など労働条件と雇用契約の改善を要求していく。特に労基法適用闘争を重視し、「業務委託契約」を口実にした偽装請負を糾弾する。契約社員等の社員登用制度を各企業に迫る。また、映演各社に直接雇用を原則とすることを求める。
  7.  '13春闘アンケートの長時間労働などの結果を重視し、長時間労働とサービス残業の解消をめざす。全事業所での三六協定締結を迫る。「継続労働15時間」「インターバル11時間」「週の実労働時間60時間以内」「週1回の休日」を映演産業のルールとさせる。またワーク・ライフ・バランスを就労の原則にさせるとともに、ディーセントワークの実現をめざす。
  8.  映演各社に、十分な防災対策、震災対策を講じるよう求める。
  9.  「労働者派遣法の抜本的改正」「最低賃金・全国一律1,000円」の実現を、映演労連としても'13春闘の中心課題とする。

3. '13春闘の具体的な取り組み

  1.  '13春闘の産別統一スト権を早期に確立する。
  2.  各労組の要求書はできるだけ早めに提出し(2月下旬か3月初旬)、スタート良く闘う。
     映演労連団交は各単組の回答が出る前に行い、今年も3月中の開催をめざす。また各単組の団交には、必要に応じて映演労連役員が参加する。
  3.  3月14日の「映演労連13春闘の集い」を必ず成功させる。
  4.  2月8日の「2・8国民春闘統一行動」、3月5日の「国民春闘決起中央行動」、3月8日の「MIC 2013春闘決起集会」、3月9〜11日の「原発ゼロ、震災復興全国一斉行動」、3月14日の「映演労連13春闘の集い」(映演労連統一行動)、4月5日の「夜の銀座デモ」(映演労連統一行動)、4月16日の「映演労連産別スト」(映演労連統一行動/予定)、5月1日「第84回メーデー」(映演労連統一行動)などに積極的に取り組み、産別統一行動を強化して'13春闘を盛り上げていく。5月連休明けの闘いも重視する。
     政府・経団連などへの要請行動にも取り組む。今年も厚労省に「要請書」を提出し、3月段階で厚労省交渉を行う。
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  6.  国民春闘共闘の回答指定日は3月13日だが、映演労連の一斉回答指定日は今年も現実的に考えて4月15日(月)に設定し、4月16日(火)に産別統一スト(10分間程度/映演労連統一行動)を構えて、映演各社に一斉回答を迫る。その意思統一と準備のために、オルグ・教宣活動を積極的に展開する。また、妥結日も揃えるよう努力する。回答速報体制を強化し、映演各社の労働条件調査を充実させる。
  7.  
  8.  組合員全員で闘う春闘をめざし、全組合員が一度は春闘行動に参加することを組織する。
  9.  
  10.  「法令違反チェックリスト」を活用する。
  11.  
  12.  「労働者派遣法の抜本的改正」「最低賃金・全国一律1,000円」の実現に向けて行動し、全労連や国民春闘共闘委員会が提起する行動に最大限参加する。
  13.  
  14.  映演各社に、高齢者雇用安定法を積極的に活用し、定年延長も含め、雇用と年金の連携がはかれるよう60歳代前半の雇用確保を要求する。60歳以降の賃金は、60歳時の70%以上とするよう要求する。

4. リストラ「合理化」、雇用破壊に反対し、職場と権利を守る闘い

  1.  映演各企業の経営危機には機敏に対応し、雇用と職場の確保を第一に闘いを構築する。資本の勝手なM&Aは許さない。リストラ「合理化」攻撃に対しては、産別ストを背景に闘う。各企業ごとの経営分析・対策会議を再開する。日ごろから経営チェック能力を高めるとともに、事前協議制を確立する闘いを進める。また、経営責任・雇用責任を厳しく追及する。経営者の横暴を許さない闘いを強化する。
     また、労基法違反、労働契約法違反、派遣法違反、不当労働行為などの違法・脱法行為の一掃を目指す。契約労働者の労働基準法適用を闘い取る。
  2.  東映ラボ・テック労働者の雇用を守る闘い、東映太秦映像スタッフの雇用確保を求める闘い、角川映画の関西オフィス閉鎖反対闘争、角川大映撮影所分社化闘争など、リストラ「合理化」に反対し職場と雇用を守る闘いに全力をあげる。
  3.  スタジオ・イースター闘争、ラピュタ不利益変更撤回闘争などフリーユニオン争議を全面的に支援し、早期の勝利解決を目指す。松竹及び松竹映像センターに、2012年12月20日付要求書の実行を迫る。
  4.  JAL不当解雇撤回の闘いや、MIC争議団、全労連争議団の勝利をめざして、積極的に支援する。

5. 映演産業の基盤拡充と映演文化発展をめざす闘い

  1.  映演労連が11月20日に提出した「フィルム映画文化の維持と映画原版保存に向けた要請書」に基づき、経産省、文化庁をはじめ、映連、映画各社と交渉を行い、日本のフィルム映画文化の維持とデジタルデータを含めた映画原版保存のための最大限の努力を促す。
  2.  映演文化予算の縮減に強く抗議し、日本映画への公的助成の拡大をめざす。映画の表現の自由を守り、公的助成の拡大を進めるために、多くの映画人、映画団体と共同して闘う。
  3.  「映画振興要望書」や「日本映画振興基金」「映画原版保存要請書」の背景となる運動を強化するため、映職連や日映協、アニメーター演出協会、映連などとの懇談を進める。製作・配給・興行の現場で働いている組合員を集めた部門別会議や産業政策委員会を行う。
     それらの活動の成果を活かして経産省と文化庁に対する「映画振興要望書」を作成し、5〜6月段階で経産省交渉と文化庁交渉を行う。
  4.  映演労連の中で、演劇文化と舞台美術の振興に関する議論をもっと喚起する。
  5.  アニメ分野の活動を強化する。
  6.  放送局の一方的な番組製作費削減や権利剥奪など、放送局と番組制作会社の不公正な支配関係の改善をめざして行動する。

6. 憲法改悪阻止と、平和と民主主義を守る闘い

  1.  9条、96条を狙った憲法改悪を阻止する闘いを'13春闘の最重要課題に位置づけ、それを中心に平和と民主主義を守る闘いを創意工夫して進める。「映画人九条の会」の発展に向けてよりいっそう努力する。
     新・憲法署名に積極的に取り組む。
  2.  解釈改憲による集団的自衛権行使の容認と、明文改憲の策動に反対する。国家安全保障基本法、海外派兵恒久法、秘密保全法に反対し、軍事大国化阻止に向けて行動する。また、衆院比例定数削減反対・小選挙区制の見直しを求めるなど、民主主義を守るたたかいを進める。
  3.  原発ゼロをめざす諸行動に積極的に参加するとともに、原発依存のエネルギー政策を再生可能な自然エネルギー利用へ抜本的に転換することを求める。震災復興に乗じた大企業中心の「構造改革」強行に反対し、被災者本位の復興事業を実現させる。
  4.  映演産業に致命的な打撃を与える消費税増税と社会保障制度の改悪、農業、医療ほか国内産業を破壊するTPP参加に反対する。

7. 組織拡大と組織改革の闘い

  1.  組織人員を1400人台に戻す中期計画を実践する。各単組は会社従業員の過半数の組織化をめざす。
  2.  映演労連フリーユニオンの拡大と、多発するフリーユニオン争議に対応できる体制をつくる。
  3.  教宣活動を重視し、「映演労連ニュース」「映演労連ホームページ」「パソコン・ネットワーク」をより充実させる。

III. 産別スト権の確立

 '13春闘では産別スト権を確立して闘う。高率での確立をめざす。

IV. '13春闘の主な闘争スケジュール

予定
2月 1日 有期契約労働シンポジウム(14:00〜主婦会館プラザF)
4日 第1回組織拡大プロジェクト(18:50〜映演労連)
6日 全労連春の組織拡大交流会(13:30〜全労連)〜7日
8日 13春闘産別スト権投票開始、13国民春闘中央行動(メイン12:00〜日比谷野音中央集会)
15日 民主化対策会議総会(13:30〜全労連会館)
20日 映演労連第4回中執(15:00〜映演労連)
22日 映画人九条の会2.22学習集会(18:50〜文京シビックセンター4階ホール)
28日 第21回執行委員セミナー(団体交渉の進め方II/18:30〜文京シビックセンター5C会議室)
3月 初旬 各労組春闘要求書提出
2日 MIC議研究会(ニューウェルシティ湯河原)〜3日
5日 13国民春闘中央行動
8日 MIC春闘決起集会(18:30〜文京区民センター3A)
9日 つながろうフクシマ!さようなら原発大集会(14:00〜明治公園)
10日 0310原発ゼロ☆大行動(13:00〜日比谷野音、14:00〜デモ、17:00〜国会前集会)
13日 13国民春闘回答指定日
14日 第6回スタジオ・イースター裁判(10:00〜東京地裁823号法廷)、13国民春闘総行動
映演労連13春闘の集い「映画原版保存の現状と問題点」(18:50〜文京シビック5C)
【映演労連統一行動】
19日 産別スト権集約日
28日 映演労連中央闘争委員会(18:50〜文京区民センター3C)
29日 映画人九条の会「想い出のアン」上映会(18:50〜文京区民センター3A)
4月 2日 新歌舞伎座こけら落とし
5日 夜の銀座デモ(18:30〜銀座公園) 【映演労連統一行動】
12日 MIC争議支援総行動
15日 映演労連回答指定日
16日 映演労連一斉ストライキ 【映演労連統一行動】
25日 映画人九条の会4・25学習集会(予定)
5月 1日 第84回メーデー 【映演労連統一行動】
以上