ニューズレター No.41

(2005.1.17発行)

目次

新年、明けましておめでとうございます

 2004年はイラクへの自衛隊派兵や、人質へのヒステリックなバッシング、憲法改悪への急激な動きなど、日本という国と日本人の嫌な面が特出した、嫌な年でした。日本や世界各地では、大災害も頻発しました。

 今年はなんとしてもこの嫌な流れを断ち切り、流れを変えなくてはならないと思っていますが、大増税、教育基本法改悪、憲法改悪のための国民投票法案の強行などが狙われています。1月早々から、自民党の安倍晋三幹事長代理、中川昭一経済産業相がNHKに圧力をかけて番組内容を改ざんさせた問題が発覚し、またもNHKと自民党の底知れぬ腐敗の様相を見せつけましたが、日本を戦争のできる国にしようという勢力の恥知らずな攻撃は熾烈です。

 今年は、改憲勢力が改憲の目標に定めている2007年に向けて、一大闘争が始まる年になるでしょう。

「映画人九条の会」の活動に集中するため、自由ネットのニューズレターを当分の間休止します

 また今年は終戦60年、被爆60年の年でもあります。日本映画も、『亡国のイージス』『ローレライ』『男たちの大和』など、それを狙った映画が公開される予定です。私たち「映画の自由と真実ネット」の真価が問われる年でもありますが、現在の最大の問題は、憲法改悪の流れを阻止することです。

 私たちも参加して、昨年11月24日に「映画人九条の会」が結成されました。私たちは今、この「映画人九条の会」の活動に力を集中し、「映画人九条の会」の運動を発展させることが一番大切だと考えています。

 ですが、「映画人九条の会」と「映画の自由と真実ネット」は事実上、事務局や運営委員会が重なっており、物理的な無理が生じています。

 そこで幹事会は、「映画人九条の会」の活動に集中するために、しばらくの間、「映画の自由と真実ネット」のニューズレター発行を休止することにしました。これまで「映画の自由と真実ネット」がやってきた各種のイベントも、「映画人九条の会」の活動として行われるようになります。会員の皆様のご理解を、ぜひともお願いする次第です。

 「映画の自由と真実ネット」のニューズレターは休止しますが、代わりに会員の皆様には「映画人九条の会」のMailニュースをお送りします。

 また「映画の自由と真実ネット」会員の皆様も、ぜひ「映画人九条の会」にご参加ください(すでに多くの方が参加されていますが)。氏名、住所、電話番号、メールアドレス、発表時の肩書き、メッセージなどを書いて、映画人九条の会事務局(映画の自由と真実ネット事務局と同じ)にお送りくだされば結構です。カンパは求めていますが、会費はありません。よろしくお願いします。

映画人九条の会が3月3日にビッグイベント!

シリーズ映画と憲法対談・1/私にとって戦争とは
黒木和雄(映画「父と暮らせば」監督) VS 小森陽一(九条の会事務局長)

 映画人九条の会は2005年最初のイベントとして、「父と暮らせば」で「戦争レクイエム三部作」を撮り終えた黒木和雄監督と、九条の会事務局長(東大教授)の小森陽一氏をお招きして、「シリーズ映画と憲法対談・1/私にとって戦争とは」を行います。

 日時は、3月3日(木)18:45から。場所は、東京・文京区民センター3Aホールです。詳しいことは、これから発行される「映画人九条の会」Mailニュースをご覧ください。

戦後60年の2005年を迎えて - 山田和夫(ネット代表委員/映画評論家)

「勝利」と「敗戦」と「経済」

 毎年1月末、モスクワのゴスフィルモフォンド(国立映画保存所)で小さいけれど、中身の充実した小映画祭が開かれる。世界最大級のアーカイヴが1年間の仕事を紹介し、その年記念すべき作家や作品の特集プログラムもあり、今年は「反ファシスト戦争勝利60年記念」の特集が組まれると知らせてきた。そうなんだ、私たちは単純に「戦後60年」というけれど、彼らにとっては、ファシストの侵略と占領に戦って勝利した記念の年なのである。中国でも同じ表現が使われ、朝鮮や韓国では、日本の植民地支配からの「解放」記念を祝う。

 私たちは戦後、あえて「敗戦」といわず、「終戦」という、敵味方や戦争の大義をあいまいにした用語にならされた。しかし、もしあの戦争の「大義」を見つめるならば、欧米諸国やアジア諸国の表現こそ正しいし、私たちにあの戦争の責任と大義の所在をつきつめてやまない。「戦後60年」の2005年を迎えて、私は第一にこのことを腹にすえて考えた。

そのとき16歳だった……

 つぎに、では60年前の自分は?という自問が来る。

 1944年の年末、私は連日の雪になやまされて、鳥取県美保の海軍航空隊にいた、16歳。海軍甲種飛行予科練習生(いわゆる「予科練」)としてだが、もう少年航空兵が乗る飛行機はない。連日、飛行場づくりや、防空用の横穴掘りの土木工事に追いまくられていた。一夜全員があつめられて、水上特攻隊「震洋」(ベニヤ板の爆装モーターボートで自爆する)の要員に志願するものを募る、という。「志願」といっても、もし「志願」しなかったなら、冷酷な下士官たちの暴力的制裁が待っている。「強制」と何ら変わらない。一夜の猶予をあたえられて翌朝、私を含めて全員例外なく「志願」した。下士官たちの暴力もおそろしかったが、もう「特攻」以外に戦局を打開できないきびしい現実が目の前にあったとき、戦争の「大義」などわかろうはずのない少年、「国のため」といわれれば、少々の矛盾撞着など脇へどけ、ひたすら突進する以外にない、そのように教育された心と頭のおそろしさは、いま思って慄然とする。

 そのときは一定の選別が行われ、一人っ子や長男は外された。私も長男で男一人ということで選ばれなかった。それから3ヵ月、1945年の春には、もう「志願」も「選別」もない。全員、水上特攻要員として岡山県倉敷航空隊へ移ることを命じられた。そしてもし「終戦」があと2週間おそかったら、私は特攻隊基地に配属され、いつ死の出撃を強いられたかわからない。

 そのときの記憶、なかでも最初に「志願」の決意を強いられたときの一夜の悩みは、今も心のなかでうずき続けている。こんな思いをこれからの世代に、二度と味わわせたくない。それが、「映画人九条の会」の活動につながる私の転機を用意した。2005年、憲法改悪勢力の急ピッチな準備攻勢に負けず、私は非力ながら「映画人九条の会」に力を尽くしたい。

「戦艦ポチョムキン」が生れて80年

 第3に、2005年12月24日は、セルゲイ・エイゼンシュテインの世界的名作「戦艦ポチョムキン」(1925年)が、モスクワのボリショイ劇場で初公開されてより80年になる。すでに百数十回見、全カットの分析もやったことのある古典中の古典だし、世界の映画人はいまもこの名作とその作家への尊敬を忘れない。本年2月のベルリン国際映画祭で、この映画のフルオーケストラつき特別上映が行われえたのはその一例にすぎないし、私の所属するエイゼンシュテイン・シネクラブ(日本)は、今年の12月、記念の上映を行う。

 最近改めて見る機会を得て、とくに強く感銘を受けたのは、この映画に込められた革命精神であり、人間愛のアピール、平和への願いであった。エイゼンシュテインはサイレント映画に不可欠の字幕をつかうとき、言葉の意味を文字で伝えるだけでなく、文字の視覚的インパクトを考えた。この映画で二度、最大級の文字でスクリーンを埋めたのは、「兄弟!」という呼びかけ。第一回は仲間の水兵たちに衛兵隊が発砲を命じられたとき、革命家の水兵ワクリンチュクが叫ぶ。そのあと「だれを撃つのだ」の言葉が続く。第二回目はラスト近く、赤旗を揚げたポチョムキン号と弾圧にきた艦隊がまさに出会うとき、ポチョムキン号は「われに合流せよ」の信号を揚げ、最後の瞬間、艦隊から水兵たちの「ウラー!」の歓声が響き、ポチョムキン号から「兄弟たちだ!」の叫びが応える。

 この「兄弟!」の呼びかけこそ、しいたげられた民衆が、互いの殺し合いを止め、自分が歴史の主人公となるため、相呼応するアピールである。「革命」とはこれである。

 私は80周年を機に、この古典的名作が、こうした心に貫かれていたことを見直したい。

そして「自主上映」がはじまった

 第4に、どうしても提起したいのは、この「戦艦ポチョムキン」が空前の自主上映運動になって、はじめて日本に上陸した事実。いまでこそ、映画運動共有の用語となった「自主上映」は、1959年2月にはじまる「戦艦ポチョムキン」の自主上映からである。この用語の持つ本質的な意味合いをいまこそしっかりと身につけたいと思うが故に、志を同じくする仲間とともに、この節目の年に改めて論議したいと願うものである。このことは、また機会を得てよりくわしく述べることにしたい。

(2005年1月8日)

速報!松竹労使が、新撮影所建設に向けて新協定!

 松竹では「2002年末までに新撮影所を建設する」という4年前の協定が無視され、新撮影所建設が遠のいていましたが、松竹労組と映演労連は松竹闘争支援共闘会議(今井一雄議長)を再開し、東京都労働委員会にも訴えて闘いを進めてきました。

 昨年10月には連続3回にわたって松竹・迫本社長と団体交渉を行い、その内容をもとに松竹労組はさらに協議を詰め、「撮影所の必要性について一致した」「4年前の協定の趣旨にのっとり真摯に協議を進める」「今後2年間の幅の中で撮影所建設を判断していく」などの新協定を勝ち取りました。これを受けて今年1月17日、東京都労働委員会においても和解が成立しました。

 4年前の協定が一方的に踏みにじられ、新撮影所建設が無限の彼方に追いやられていた松竹ですが、これでようやく新たな可能性が開けました。しかし、実際に撮影所建設を実現するためには、力を抜かず、継続した闘いが必要であることは、この4年間が証明しています。

 映画人の皆さん、映画ファンの皆さん、引き続きご支援をお願いいたします。

【情報コーナー】

シネコンが63%に

 昨年12月1日に行われた「映画の日・中央式典」で岡田茂執行委員長は、全国の映画スクリーン数が2,824になり、そのうちシネコンが63%(前年比6%増)に達したことを明らかにしました。シネコン急増の陰で、既存館はどんどん潰れています。こうした映画館興行地図の大変化が、日本映画にさまざまな影響と深刻な問題を与えています。

「映像産業振興機構」が誕生

 昨年12月6日、映画映像産業の支援・振興を目的に「映像産業振興機構(理事長・迫本淳一松竹社長)」が設立されました。映画を支援する独立機関の設立は多くの映画人の願いでしたが、この「映像産業振興機構」は、政府の知的財産推進計画に基づいて日本経団連のエンターテインメント・コンテンツ産業部会主導で作られたもの。理事のほとんどが大手映画会社や放送局などの経営者で占められています。財界主導で、はたして日本映画は振興するでしょうか。

NHKスペシャル「徹底討論・どうする憲法、国民に問う」に意見集中を!

 NHKは1月22日(土)と1月23日(日)の21時から、NHKスペシャル「シリーズ憲法・わたしたちは9条とどう向きあってきたか/徹底討論・どうする憲法、国民に問う」を放送します。1月22日の第1回は政治家や官僚、有識者などへのインタビューが中心のようですが、23日の第2回は、生放送で、スタジオに各党代表の国会議員、そして一般の人々などを招き徹底討論する、となっています。それに向けてNHKは今、国民からの声を募集中です。意見を寄せる先は、http://www.nhk.or.jp/kenpou/ からです。ファックスは03-5455-7777。底知れぬ腐食の構造を見せているNHKにこんな番組を作る資格があるのか、とは思いますが、映画の自由と真実ネットの会員の皆さん、私たちの声をNHKに集中しましょう。あまり時間はありませんが。

編集後記

 マッド・アマノさんが東京新聞に「NHKはJHK・自民放送協会に改名したらいかが?」と書いていました。私もそう思います。(邦)

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