映演労連第73回定期大会報告
映演労連は10月17日(木)11:00より東京労働会館・ラパスホールにて第73回定期大会を開催しました。来賓として全労連の秋山議長、日本文化情報労組会議(MIC)の西村議長をお招きし、ご挨拶を頂きました。大会にはご来賓2名の他、リアル参加21名、WEB参加17名、傍聴2名、合計42名が参加(委任状4通含まず)、17の労組・団体から篤い連帯のメッセージを頂戴しました。
金丸委員長による開会あいさつの後、長谷代議員(松竹労組)と郡司代議員(全東映労連)の両議長によって議事は進行。「72期活動報告」、「72期会計報告」、「私たちを取り巻く情勢」を確認。その上で、来期「73期運動方針」「73期予算」の提案を行い、大会参加者による討論に進みました。
なお、討論では参加者全員が発言できるよう少人数に分散したグループ討議に初めて挑戦しています。
【グループ討議の概要】
大会中に各グループの討議内容を紹介できませんでしたので、以下に概要を掲載します。なお、頂いた意見も参考に73期の運動方針を進めることを新・中執全体で確認しています。
・労組の運用について
女性執行部の割合を増やすために~原因としては職場全体のジェンダー意識が低いこと、特に子育て中の女性は組合役員に誘いにくい状況があるとの声がありました。その一方で、敢えて組合の要職に女性を立てることで、女性でも組合で活躍しやすい雰囲気が生まれた。また、執行部以外の子育中組合員に団体交渉に参加して貰うことで、組合への意識を高めて貰うよう工夫している、との意見も寄せられました。
労組の活性化~労組の活動が弱っている原因として、一部の執行部に任せきりになっている、組合ニュースが読まれていない、執行部と一般組合員との接点がない、そもそも組合へ相談しようと思いつかない人が多く直接人事部や外部の団体に相談が持ち込まれるケースも多い、などの意見がありました。その克服として、2年毎に組合執行部が半数づつ交替する、ニュースで伝えるだけじゃなく直接対話を心がけるようにしているなどの取り組みが報告されました。要望としては、一般組合員を対象とした講演会(インティマシーコーディネーターなど)と懇親会をセットにした企画、組合執行部向けの定期的な勉強会を開催、SNSを活用した組合執行部と職場を繋ぐ工夫などが挙げられました。
・労働環境について
長時間労働~映画製作、現像、舞台公演など現場における深刻な長時間・過密な労働実態が報告されました。原因としては人が足りない、替えがきかないので無理やり仕事を継続させられる、納期が優先される、早朝深夜でも連絡OKな業界の悪い監修、リモートワークの定着で仕事と休みの境界が曖昧になった、など。その結果、若手の離職が増え、人が減って余裕がないため育成に手が割けないといった悪循環を指摘する声も。対応策としては上司への勤怠システムを通じた警告通知、36協定違反の場合は上司が始末書提出、組合より会社に対して抗議するなど寄せられましたが、いずれも抜本的な解決には至っていないとのことです。解決策としては会社あるいは業界全体で労働時間の短縮を目指すこと、余裕のある現場の人員配置、若年層の待遇改善などが挙げられました。
副業について~角川では会社に申請すれば副業OK、松竹は副業制度はあるが現実的にはほぼ認められていない、日活では検討中との実態が報告されました。今後については、各社の副業に関する情報は共有するとして、組合としては副業ルールの構築より賃上げなど労働条件の向上を目指そう、との意見一致が見られました。
・業界の課題について
待遇~撮影カメラマンの報酬相場が30年変わっていない、ラインPなど若手プロデューサー助手クラスは過密な労働が避けられない、TV制作の要であるはずの美術会社の待遇が悪い、中小の演劇は全体に待遇が低いため担い手が集まらないなど、一企業や団体だけでは解決困難な課題が寄せられました。業界全体の底上げを図るためにも、「文化芸術振興基本法」の具体化や、若年層の待遇改善を軸とした産別要求の工夫などが挙げられました。
【議案採択の状況】
議案1(72期闘いの経過と総括)、議案2(72期会計報告)、議案3(情勢)、議案4(運動方針)、議案5(予算)について、出席代議員18名のうち3分の2の賛成を得て採択されました。
73期役員候補の投票でも候補者全員が出席代議員18名のうち3分の2の賛成を得て信任されました。
- 第73期・主な映演労連役員
- 中央執行委員長
- 飯野 高司(日活労組)
- 中央副執行委員長
- 一石 鉄哉(映演労連FU)
- 遠藤 美希 (角川映画労組)
- 柏倉 肇 (全東映労連)
- 金丸 研治(松竹労組)
- 書記長
- 梯 俊明 (松竹労組)
- 書記次長
- 宮下 卓 (映演労連フリーユニオン)
大会宣言
本年8月の消費者物価指数はコメ不足の影響もあり前年比+2.8%(生鮮食品除く)と増加傾向で、2020年を100とした場合の物価指数は108.7に達した。一方、実質賃金では2020年を100とした場合の賃金指数は8月時点で84.1に目減りしている。この4年で一気に開いた物価と賃金の大きな溝、その最大の要因は政府の大失策にあると言えよう。インボイスも含めた大増税の押し付け、米国いいなりの軍事予算の増大、市民生活を置き去りにした極端な金融政策によって株価は乱高下し、結果として私たちの生活は厳しさを増すこととなった。能登半島では震災からの復興が困難を極める中で、追い打ちをかけるような水害が発生した。これまでも自然災害の都度、政府対応が問われてきたが、今回も省(かえり)みられることなく同様の批判が巻き起こっている。
しかし、元凶である政府与党は裏金問題には蓋をし、その反省もないままに総裁の首をすげ替え、突然の衆議院解散で強引な幕引きを図ろうとしている。私たちの生活はゲームのようにリセットし、復活できるものではない。市民生活の延長上にある政治も同様であるはずだ。
日本政府が核兵器禁止条約の批准(ひじゅん)を拒否し続ける一方で、核なき世界を追求し続ける日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協(ひだんきょう))がノーベル平和賞を受賞し改めてその活動が評価された。困難な情勢の中、日本被団協が70年に亘ってひたむきに訴えた核のない展望ある未来が多くの人々の共感を得たからこその受賞ではないだろうか。
私たちは本日の定期大会で真摯にこの一年の活動を振り返った。山積する課題を再認識しつつ、昨年を上回るストライキ結集など経済闘争の前進、ハラスメント根絶宣言の獲得、昨年微減に踏み止めた組合員拡大の取り組みなど、小さいながら一つ一つの成果を共有し合い、次期の運動方針を確認することで展望を見出そうと努力している。
世界では多くの一般市民が戦禍に巻き込まれている。国内では貧困と格差が拡大されようとしている。平和でなければ成立し得ない文化産業に従事する私たちだからこそ、諦めずに平和を追求しよう。映演産業に格差と貧困が蔓延(はびこ)ることのないよう、正社員以外にも組合の門戸(もんこ)を開き、対話と学びあいの精神を一層広げよう。産業の再生と発展を目指し、雇用確保と処遇の改善を求め、言論・表現の自由を守り、ジェンダー平等とハラスメントの根絶を果たそう。これらの要求実現のため、全労連やMIC、志(こころざし)を同じくする仲間たちとともに闘い抜くことをここに宣言する。
2024年10月17日