2016年7月15日

経産省交渉報告 -2016年7月15日-

 7月15日、2013年1月以来、2年半ぶりに経産省との交渉を再開し、6月29日付「2016年映画産業の振興に関する要望書」に基づいて意見交換を行った。映演労連の出席は8名、経産省からは、商務情報政策局文化情報関連産業課(メディア・コンテンツ課)課長補佐伊藤桂氏、同係長(映像産業担当)松木ゆりか氏が出席した。
 冒頭の趣旨説明を受け、経産省は邦画興行収入の極端な二極化に危機感を示すも、「環境整備でできることがあればやっていきたい」と述べるにとどまった。

 フィルム映画文化の維持と映画原版保存については、「政府一体で取り組むべき。以前よりも意見交換できるようになった文化庁とも連携し、予算をつけることが望ましい」との見解を述べながら、具体策に踏み込む回答はしなかった。

 フィルム現像産業の維持 について、映演労連より深刻化する現像所の現状を伝え、アーカイブ事業という大きな産業振興の機会が損失の危機に瀕していると指摘、民間任せでない施策(独立したフィルムセンター内に現像部門を敷設する等)の必要性を強調した。  また、業界は問題意識を共有しながらも具体策を一切示さず、知財推進本部の方針も数行の報告が記載されるにとどまり、来年答申予定の文化庁の調査研究も、「デジタル」中心に小さく収れんされている懸念がぬぐえない中、アーカイブ事業が産業として発展できるよう経産省としての積極的な働きかけを求めた。
 経産省は、「横にらみにならないよう、政府一体で動きたい。課長級クラスでも横断的な交流・勉強会も開かれている。来年度予算段階では難しいが、今後の要求課題にすることなども考えられる」と回答した。

 ボーンデジタル作品の原版保存問題については、特に中小プロダクションが製作した膨大な作品がマイグレーション費用も捻出できずDCPのまま放置されている現状の危険性を認めた上で、この問題も「政府一体となって、出版や音楽など他のコンテンツ同様国家事業として進めるべき問題」としながら、取り組みとしては「必要な費用化を進めたい」と述べるにとどまった。

 人材育成の問題では、映演労連が、深刻化する現場のスタッフ技術者の人手不足を説明。経営者が危機感を抱くほどの技能の低下、志望者の減少に陥っている背景には、製作現場の劣悪な労働環境があり、アニメ同様に産業の空洞化が進行し、製作本数の増大と製作費の削減で人の取り合いと労働環境悪化がいっそう深刻化していると訴えた。
 経産省は、「遠回りでも契約回りから始め、クールジャパン戦略に沿って、契約・資金回りを扱える人材を育成し、合作映画などでも売り切りにせず、二次三次でも収入が立つような環境整備を進めるとともに、映画産業に契約文化を根付かせ、スタッフにもお金が回る仕組みを作りたい。労働環境の問題については厚労省とも連携したい」の見解を示した。
 映演労連は「厚労省は現場のスタッフを労基法適用外と見做して長年放置し、現場が疲弊してきた」「現状では、下請け会社に二次三次利用の権利を認める契約が結ばれることはなく、お金は循環していない」と指摘し、交渉を終えた。総じて問題意識の共有にとどまり、具体的な施策への回答までは得られなかった。