2014年3月18日

厚労省交渉報告 -2014年3月18日-

 映演労連は3月18日、先に提出した「2014春闘要求書」に基づいて厚労省交渉を行った。まず組合は、賃金抑制と雇用規制緩和、消費税の増税などの懸念を伝え、厚労省としても大幅賃金の引き上げとともに、非正規雇用の拡大に歯止めを掛ける雇用政策への転換を呼び掛けるように強く要請した。これに対し担当官は、「事業収益が向上し、それが労働者に分配され行き渡る事を期待している」「今春闘では大企業での賃上げ回答が多く、これが派生して中小でも賃上げの回答が多く出ると期待している」と述べた。映演労連は、マスコミに発表される賃上げ数字には非正規や下請け中小企業の数字が反映されていないうえ、大企業の定昇を除く回答額発表(2,000〜3,000円)という点でも低い水準に陥りがちであり、定昇込みの回答額や非正規への反映度について厚労省としても調査を強化するよう求めた。

 次に組合は、映演産業で蔓延する長時間労働の削減に向け、実効性のある労働時間規制の施策を打ち出すよう求めた。これに対し担当官は、「長時間労働の削減は労働者の健康維持のための重要な問題」とし、違法長時間労働、また三六協定の特別条項にも違法部分があれば取り締まるとして、法の適用と運用を厳格化する、また法運用のために労働者側からも積極的な告発を望むと述べた。映演労連は、映演産業が常に締切を持つ産業であり、締切に間に合わせるために長時間労働が常態化してしまう現状を伝えた。また、特別条項導入の要件である「労使の協議」は形骸化しており、少なくとも使用者は労働者代表に労働時間のデータを開示しなければ、話し合いにもならない、と苦言を呈した。厚労省からは個別の労働時間と言えども厳密に個人情報には当たらないと考えると述べ、労働時間情報開示の必要性に一定の理解を示した。

 ブラック企業の一掃に関する要請については、社会で労使共に労働法を知らない現状があるとし、法周知の徹底、また法律の厳格運用、そして気軽に相談出来る相談窓口を設置すると述べた。

 偽装請負の解消と芸能実演家やフリースタッフへの労災適用に関する労働者性判断基準の問題については、判断する場合は契約形態だけでなく実態を精査した上で労働者性を判断している、と述べた。組合からは、現実には労基署窓口で「俳優である」と業種を伝えただけで「労基法の適用外だ」と門前払いをされる実例を挙げつつ、現行の労働者性判断基準そのものが矛盾を抱えており、純然たる経営者以外は総じて労働者とみなす立法措置がなければ多くの芸能実演家は救われない、と訴えた。

 派遣法に関する要請については、26業務の区分に混乱があったが先の閣議決定によりこれを撤廃し、全業務を対象として3年以上派遣を受け入れ継続するための制限を設ける、と説明した。組合からは3年以上の26業務派遣労働者が、直接雇用の申込み義務違反があったにも関わらず雇止めされたこと、これを不服として労働局に相談したところ26業務違反のみ会社を指導し、直接雇用も雇止めの件も不問に付すなど、現行派遣法ですら杜撰な解釈が行われている実例を挙げ、拙速な派遣法の改正をやめるよう強く求めた。
 また、法改正により無制限な派遣継続が行われる点を指摘すると、厚労省は制限要件となる労働者代表の意見聴取の運用を厳格化する方針だ、と述べるにとどまり、具体的な縛りについては言及しなかった。組合としては、常用代替防止と均等待遇の考慮されていない今回の改正案には強く反対している旨を強調した。
 なお、今回の派遣法改正案がこのまま実施されると、これまで26業務として長年働いてきた労働者は、3年経過前に部署異動か、派遣先での直接雇用、派遣元での無期雇用がなければ継続勤務ができなくなるという事態にも警戒が必要だ。

 雇用分野における規制改革に関する要請については、厚労省は本来的には法制度を施行する立場であり、法制度の改革について直接に手を加える立場ではなく、また労使間の事は労使の交渉で決めるのが本来の形と考えていることを述べた。しかし、現在議論されている限定正社員制度については、厚労省としても敢えて制度化する必要性を見出せないとの見解が述べられた。映演労連からは、今回の規制改革の動きは非正規労働の増大だけでなく、正社員との更なる待遇格差や長時間労働の常態化を招きかねないと指摘。厚労省の本来の方針である労働者保護と安定雇用の創出、そして均等待遇など、ディーセントワークに基づく抜本的な方針転換を求めて協議を終了した。

以上