2013年5月24日
文化庁長官 近藤 誠一 殿
映画演劇労働組合連合会
中央執行委員長 金丸 研治

2013年日本映画文化の振興に関する要望書

 2012年の映画入場者数は1億5515万9千人(前年対比107.2%)、興行収入は1951億9千万円(前年対比107.7%)となり、東日本大震災の影響を受けた2011年の成績は上回りましたが、映画スクリーンのデジタル化は驚くべき速度で進み、2012年末にはなんと88.1%に達したと言われています。中小の老舗劇場は閉館が相次ぎ、シネコンの新規出店数も4年連続で1ケタにとどまっており、2012年末時点のスクリーン数は2年連続の減少で3290スクリーンとなりました。
 こうした映画のデジタル化が急速な進行は、米イーストマン・コダック社の破産法適用申請や、富士フイルムの映画用フィルム生産中止となって現れ、日本映画文化はいま重大な危機に瀕しています。
 私たち映演労連は、今ほど日本映画文化の維持と振興に向けた公的支援の拡充が必要な時はないと考えます。私たちは、下記の通り日本映画への公的支援のいっそうの拡充と、効果的な日本映画振興策の実施を強く求めるものです。
 ぜひとも前向きなご検討をお願い申し上げます。

1. 日本映画への公的支援を最高時に戻してください

 文化庁、並びに日本芸術文化振興会による日本映画への支援予算(若手映画作家等の育成事業、アニメーション映画製作支援事業、若手アニメーター等新財育成事業、日本映画の振興事業=平成25年度予算は13億2100万円)は、年々減少しています。しかし日本映画の現状は、公的支援のいっそうの拡充を求めています。来年度予算では、日本映画への支援額をせめて最高時(平成16年度25億100万円)に戻してください。

2. 日本芸術文化振興会と国立美術館の運営交付金増額を

 平成25年度の日本芸術文化振興会運営交付金は前年比6億2900万円、国立美術館の運営交付金は前年比2億3800万円と大きく減っています。来年度はこれらの運営交付金を増額するとともに、東京国立近代美術館フィルムセンターの運営予算を拡充してください。
 またフィルムセンターの早期独立を進めるとともに、フィルムセンターのアーカイブ事業を拡充してください。

3. フィルム映画文化の維持と映画原版保存に向けて

 膨大な旧作映画フィルムの悪化とデジタル製作の急増は、フィルム映画文化の維持と映画原版保存について待ったなしの状況を生んでいます。私たちが作年11月20日に提出した「フィルム映画文化の維持と映画原版保存に向けた要請書」に基づいて各映画団体、経済産業省などと協議・研究を進め、フィルム映画文化の維持と映画原版保存に向けて行政として第一歩を踏み出してください。
 オーファンフィルムの権利関係等の調査を迅速に進め、修復・保存と、国民が利用できるシステムを構築してください。
 また、映画保存についての法制化を進めてください。

4. 本格的な人材育成策の実施を

 平成16年度から始まった「映画スタッフ育成事業」は、映画製作をめざす学生に2〜3ヶ月の実践の場を提供するにとどまっており、本格的な人材育成策とは言い難いものがあります。
 私たちは、映画業界と連動した本格的な人材育成制度の実施を求めます。また、撮影所や製作プロダクションでの人材育成を支援する制度をぜひ実現してください。

5. 消費税増税の中止を

 いま映画館に10%の消費税が課せられたら、映画館は経営が立ちいきません。消費税増税は映画館の経営に致命的な打撃となります。映画館の経営を守るためにも消費税増税の中止を求めます。また、仮に消費税増税が実施された場合には、映画館経営を守るために特別の措置を講じるよう要請いたします。

6. 時代劇づくりの職能と制作基盤維持に支援を

 日本の時代劇文化を支えてきた撮影所、スタッフ、カツラ、衣装、小道具、殺陣などの会社は今、苦境に立たされています。このまま事態が推移すれば、時代劇づくりの職能と基盤の崩壊に繋がりかねません。
 私たち映演労連は、時代劇づくりの職能と制作基盤維持に向けた支援の実施を強く要請いたします。

7. アニメ産業の改革について

 日本のアニメーターの時間単価は、東京都の最低賃金を大幅に下回っているのが現状です。日本のアニメ産業の発展のために、経済産業省や文化庁、厚生労働省、大手制作プロダクション、テレビ局などが協力して、原画・動画単価の底上げやきちんとした雇用契約の締結、社会保険への加入、放送局とアニメ制作プロダクションとの公正な契約関係の確立などに向けて努力するよう要請いたします。

8. 映画・映像スタッフの社会保障、労働条件の改善を

 映画・映像の制作現場は違法だらけで、セーフティーネットと呼べるものはほとんどありません。映画制作にかかわる者が、せめて他の産業分野の一般勤務者並みの保障の下に安心して仕事ができるよう、社会保障制度の適用やきちんとした雇用契約の締結、労働条件の改善を強く要請いたします。

以上
連絡先
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