I. '18春闘をめぐる情勢
1. 政治・経済の情勢
安倍首相は、1月4日の年頭会見で年内の改憲発議に意欲を示した。
安倍政権は、秘密保護法・戦争法・共謀罪などの違憲の可能性を指摘されるさまざまな法律で平和憲法を骨抜きにしようとしてきたが、その総まとめを打ち出してきた形だ。
17年の政治情勢は、嘘に彩られた一年だった。南スーダンに派遣された自衛隊の日報の隠蔽問題。森友学園へ国有地が不当に安く払い下げられた問題。獣医学部新設に関して加計学園だけに便宜が図られたとされる問題。6月には、共謀罪が「テロ対策に資する」という嘘の衣をまとって強行採決された。極めつけは「少子化、北朝鮮問題などの国難を問う」と称して行われた解散・総選挙だ。
それぞれの問題で、次々と政府側の答弁を否定する事実が明らかになり、答弁は次々修正されていった。
だが支持率は、問題が起きると下がるが、国会を閉じると上昇する現象が続いている。そのため安倍政権は野党の臨時国会開催要求を2年連続で拒否するようになった。
総選挙後は、予算委員会での与党の質問時間増加を要求、18年の通常国会では、時間の短い党首討論を増やす代わりに予算委員会への首相の出席日数を減らす「安倍隠し」が画策されている。
こうした中、米国のトランプ大統領とともに北朝鮮危機を煽り、イージス・アショアと呼ばれる弾道弾迎撃ミサイル(当初1セット700億円と言われたが、現在は1000億円超える)の導入、長距離巡航ミサイル、ヘリコプター護衛艦の空母への改装、空母艦載機として運用する為に航空自衛隊に2個飛行隊(F35B各20機・1機160億円と言われる)増設の検討も始まっている。
文化庁の年間予算1000億円規模に比べて法外な値段のこれら装備は、専守防衛の範囲をはるかに超える兵器であり、平和憲法をなし崩しにするものである。
政府は、日銀やGPIFの株購入による株高を背景に、「いざなぎ越えの長期にわたる好景気が続いている」という。
ベアを見送る企業も多く、社内留保は400兆円を超えるものの労働者には回っておらず、国民生活は窮乏していると言える。
労働者の実質賃金は、12年12月から17年直近の調査までを見ると、391万円から377万円と14万円ダウンしている。就業人口の15%は平均年収186万円という低所得で貧困率は38.7%に達する。
これを政府は、新規に就職した者の賃金が低いからと説明しているが、29年度版厚労白書では、94年から14年までの20年で40代所得が300万円未満の割合が11パーセントから17%と1.5倍に増加しており、政府説明と一致しない。
結果として日本経済の6割を占める個人の実質消費支出も360万円から340万円に落ち込み、17年の飲食業の倒産件数は2年連続で増加し、前年2割増となった。
このことを反映してか、生活用品や食品を同じ金額で減容量とする隠れ値上げが続いている。
全国で初めて100%を越えた有効求人倍率も、65歳前後で労働市場から退出する人口が約200万人であるのに対し、若者の参入が、120万人程度であることを考慮すれば、政府の努力でないことは一目瞭然だ。
経済が失速しているにもかかわらず社会福祉は「財源」を理由に切り下げ続けられている。
子供の貧困率は16%と高く、ユニセフが懸念するほどになっている。
高等教育への公的支出のGDPに占める割合は3.2%と低く(OECD14年調査)、比較可能な国では最悪で、学生支援機構で有利子の補助金を借りる人は8万5千人から81万人に急増している。
さらにここへきて自民党税制調査会は、年末に「フリーランスとの格差是正」を理由に給与所得控除の減額やたばこ税の増税、森林環境税・出国税の新設など大増税を打ち出している。
一方で生活保護費の大幅減額が検討され、生存権が脅かされていると訴える声が上がりつつある。生活保護費は、最低賃金や住民税免除の基準など30以上の法律と連動しており、生活保護費の削減が、社会福祉制度の悪化を招く可能性が高い。
安倍政権は、財源を無視して兵器を買い、国民生活を締め付ける一方で、さらなる労働者の締め付け策を検討している。
1月4日の年頭会見で安倍は「通常国会は働き方改革国会だ」と述べた。
残業代ゼロ法案(高度プロフェッショナル制)、裁量労働制の適用対象拡大、残業時間の罰則付き上限規制(ただし繁忙期は月100時間未満の過重労働も可能にする)、などが目玉である。しかもこれらを一括で審議するという杜撰さだ。
安倍政権は、国会を閉めれば支持率が戻るという経験から、さらに強引な政権運営をすることが予想される。
2. '18春闘をめぐる経済界、労働界の動き
(1) 経済界の動き
日本経団連は1月に18春闘の経営側指針である経労委報告を発表した。同報告では安倍首相が要請する「3%以上の賃上げ」に呼応して「収益に見合った前向きな検討が望まれる」とし、世論の批判が高まる内部留保についても「過剰に増やすことは認められない(中略)人材への投資も含めた一層の有効活用が望まれる」といった方針を示した。更には長時間労働の是正によって減少した残業代への配慮や、非正社員と正社員との格差解消など、表面的には従来になく処遇改善に前向きな内容である。しかし、賃上げは賞与や諸手当も含む年収ベース(当初は月例賃金で検討されていた)を基本としたこと、残業代ゼロ法案など労基法改悪案の早期成立を目指していること、中小企業との格差を容認するなど、依然として大企業本位の搾取の姿勢に変わりはない。
(2) 労働界の動き
連合は、「経済の自律的成長」「社会の持続性」を実現するためには、すべての働く者の「底上げ・底支え」「格差是正」による継続した所得の向上を実現することが不可欠とし、5年連続となる賃上げ要求水準は、2%程度(定昇を含め4%程度)を基準とした。同時に、正規労働者・非正規労働者を問わず、長時間労働を是正し、個々人の状況やニーズにあった多様な働き方を選択できる仕組みを整えていくとし、「人材の確保・定着」と「人材育成」がこれまで以上に重要課題であるとしている。
全労連・国民春闘共闘は、「8時間働けば人間らしい暮らしが実現!」「格差を是正!」「安倍9条改憲に終止符を!」「組織拡大強化と要求実現の両輪で社会的影響力を広げる!」を強調。アベノミクスの誤りで日本経済が深刻化するなか「アベ働き方改革」へも総反撃し、労働時間短縮・上限規制や人手不足解消に向けての増員、格差是正・均等待遇の実現に向けて、労働組合がその役割を発揮することが求められているとした。要求基準としては今年も月額2万円、時給150円以上の底上げを提起した。
3. 映像産業の情勢
(1) 映画産業の情勢
映連が1月25日に発表した2017年全国映画概況によると、興行収入が2,285億7,200万円(前年比97.1%)となり、2011年以来の前年割れを起こした。前年が良すぎたこともあるが総額は歴代2位となった。内訳は、邦画が1254億8300万円(前年比84.4%)、洋画が1030億8900万円(前年比118.6%)で、40億円以上のヒット作が10作を超した洋画が興行界をけん引(邦画は2作のみ)したものの、構成比は依然として邦画54.9%:洋画45.1%と邦画が圧倒している。邦画については興収5~10億円が約30本に上ることで、地力がついたとの評価もあるが果たしてそうか。
入場者数も微減の1億7448万人(前年比96.8%)。公開本数は1,187本(邦画594本、洋画593本)だった。邦画の公開本数は、DCPが普及した2013年以降600作品前後で推移しており、この10年で1.5倍に増えたことになる。結果の明暗がはっきり分かれる現在の上映状況で、このままの公開本数を維持していて良いのか疑問が残るし、公開本数を更に上回るであろう製作本数の大半がペイできていないとも推測できる。
2017年の作品を見てみると、2016年の『君の名は。』のようなメガヒット作は無かったものの、ここ数年の傾向と同じくアニメーションが存在感を示し、国内での興行収入トップ10のうちアニメーション作品が5作品を占めた。邦画では東宝配給の『名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』や『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』などシリーズ物が、洋画では東宝東和『怪盗グルーのミニオン大脱走』、ディズニーの『モアナと伝説の海』などである。
ここで改めての興収上位作品を見てみると、1位『美女と野獣』124億円、2位『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』73.4億円、3位『怪盗グルー(略)』73.1億円、4位にようやく邦画でアニメ作品『名探偵コナン(略)』68.9億円となっている。残念ながら邦画実写はトップ10入りできなかった。実写のトップは『銀魂』で38.4億円(13位)だった。
続いて、興収成績を配給会社別に見ていく。邦画では、東宝が620.2億円(前年比72.6%)と前年割れを起こしたものの、首位はゆるぎなかった。松竹の年間興収は156.5億円で、前年比83.5%となった。東映は興収108.9億円(前年比72.8%)を記録している。外国映画では、『美女と野獣』を配給したディズニーが圧倒的な力を見せた(興収367.3億円)。『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』は2018年統計とされるため、2018年も邦画は東宝、洋画はディズニーの市場独占は止まらないだろう。
さて、2017年の全国スクリーン数は、3,525スクリーンで前年比53スクリーンの増加となった。また、高品質の視聴体験を売りにしたIMAXデジタルシアターも2スクリーン増加し、計30スクリーンとなっている。
日本音楽著作権協会(JASRAC)は、映画音楽の上映使用料引き上げを発表。各興行関係は一斉に反発しており、今後の動きを注視したい。
最後に、初日の公開日を東宝・松竹が土曜から金曜へと切り替え始めた。長時間労働対策の一環ともしているが、依然として土曜開催のイベントも引き続くことから、その効果を疑問視する声も多い。
(2) 映像ソフト・配信産業の情勢
JVA(日本映像ソフト協会)による2017年のパッケージ年間出荷数は1917億7300万円で、前年比べても93.6%。ほぼ例年と同様に数字を落としているが、『シンゴジラ』『君の名は。』『美女と野獣』などの強力なタイトルをもってしても前年を超えられなかったことを考えると市場の弱体化はかなり深刻である。特にレンタル店の状況は厳しく、夏以降全国的に閉店が続きネットニュースにも取り沙汰された。2017年12月までの全国のレンタル店は約2,750店で、2015年の同時期から300店以上閉店している。
出荷金額の内訳は下記。 ※種目/金額(単位:百万円)/前年比
・DVDレンタル/39,056/86.51%
・BDレンタル/3,626/91.45%
・DVDセル/60,090/86.45%
・BDセル/86,134/102.96%
一部のコアなユーザーに支えられ、BDセル市場は好調に推移している。一方レンタルやDVDセルを利用していた客層は配信に流れていっているようで、どうしても欲しいものはBDで買い、それ以外は配信という二極化がこれからも進みそうだ。
有料動画配信については、ICT総研の調べによると2017年12月時点での有料動画配信サービスの利用者数は1190万人。2020年には2000万人を突破する見込みである。ユーザーの8割は定額見放題サービス(SVOD)を利用しており、その中で最も利用率が高いのはAmazonプライムビデオである。配信サービス業者間でコンテンツの獲得や月額料金の値下げ競争が起こる中、配送料無料や音楽聞き放題などのセットで利用できるAmazonの独り勝ちとなった。一方AbemaTVなど無料動画配信サービスも「72時間ホンネテレビ」が累計視聴数1430万を突破するなど話題になり、“ネットだから”可能になる企画が今後も続々と登場する可能性がある。
(3) アニメ業界の状況
日本動画協会は昨年10月に「2016年に国内アニメ市場は広義(エンドユーザー基準)で年間2兆円を突破していた」との統計資料を発表した。昨年の劇場公開作品も稼ぎ頭は邦洋ともにアニメ作品が並ぶほど好調さを示している。一方で、昨年はアクタスやセブンアークスといった中堅アニメ制作会社の再編も話題となり、現場の労働実態が改善された話も聞こえてこない。こうした実態を経産省では「情報通信産業基本調査」をもとに「多作傾向にあるものの制作会社の権利確保が課題」とする分析内容を昨年8月に公表した。先に述べたアニメ市場規模は狭義(制作会社売上基準)では前年114%と伸びたものの金額は2,300億円という水準であり、広義の市場規模の1割強に過ぎない。この差額に経産省は着目し「権利確保が課題」と結論づけたようだ。
他方では、2017年のテレビアニメ作品数は約200本とほぼ前年同数、売上額も近年高止まりとなっている。需要はあるのに制作能力が限界を超えていることの証だ。にもかかわらず、制作単価は下がる傾向にあるという。売上維持のため各制作会社は数をこなすことでカバーし、そのため現場の労働強化は必然となり、人材確保の困難な制作会社は身売り・廃業もあり得るという今日の流れだ。
需要が高まり生産が追いつかないのに、なぜ制作側の単価は上がらないのか。権利確保も重要だが、労基法の水面下に潜りこむアニメ産業の労働実態も要因と言える。非雇用型の労働だとでっちあげ、最低限の基準である労基法すら逃れることで常識外の低額制作費が成立しているとすれば、発注側の責任のみならず制作側の責任も重大だ。
他方で、一昨年の電通過労死事件を発端に、東映アニメーションをはじめ業界大手での長時間労働規制の強化が進んでいる。しかし、東映アニメ、サンライズ、トムスなど、大手制作プロダクションの昼型勤務が進む一方で、その煽りを受ける形で中小下請けプロダクションやフリーランスの労働者にしわ寄せがいっている状態が続いており、業界全体の長時間労働規制には繋がっていない。
4. 演劇界の情勢
東宝:帝国劇場では、5月~7月は『レ・ミゼラブル』のロングラン公演が大盛況。またシアタークリエでは4月~6月『ジャニーズ銀座2017』が全公演満席を記録した。2年ぶりとなる7月~8月『RENT』がファンからの支持を得て大盛況。その他、完売公演となった『GACHI ~全力entertainment4U~』等、バラエティに富んだラインナップを提供した。社外公演では8月『レ・ミゼラブル』等が事業収益に貢献し演劇事業全体として増収増益を達成した。17春闘で長時間労働対策として、演劇部(劇場を除く)にコアタイムを設けないスーパーフレックスタイム制の提案がなされた。
松竹:歌舞伎座は、5、7、8月と話題性に富んだ公演で盛況であったが、下期は幹部俳優の昼夜出演が難しく若手、中堅の俳優出演の公演で苦戦し世代交代の波がきている。新橋演舞場は、公演回数通算600回を超えた4、5月『滝沢歌舞伎2017』は安定的に高稼働した。10月『ワンピース』では市川猿之助が「すっぽん」で床下へ降りる際、回転する装置に衣装左袖が巻き込まれ負傷し緊急搬送されたが、その後の代役公演でも動員数の減はなかった。大阪松竹座は、ジャニーズ公演、歌舞伎公演、『アマデウス』が高稼働した。南座は来年秋に竣工予定と内部で発表があった。本社演劇製作部、劇場宣伝部、監事室は、現場のべた付き、仕込みの深夜作業、興行宣伝以外の業務の負荷、舞台関連会社も本社からの指示待ち状態で業務の平滑化ができず、本社、劇場、関連会社共に長時間労働が蔓延している。本社、劇場はコアタイムの無いフレックスタイム制を導入し残業は減っているが、実際は過労死ラインギリギリで働いている状態である。この演劇界の長時間労働の是正には、東宝、松竹から演劇特有の働き方を抜本的に変えていかねばならない。
現代演劇界は、1970年代生まれの劇作家、演出家が頭角を現し、創造活動の中核を担うようになった。等身大の日常性を描いた世代に代わり、敗戦などの歴史的転機や社会問題を取り上げた作品を生み出している。移民への不寛容を掲げる米トランプ政権発足で始まった2017年。きな臭さが国内外に渦巻く中、社会へ向けた気概がヒリヒリと伝わる作品が響いた。
没落感を深める日本の現状に触発されて、敗戦直後の日本や日本人の在り方を問うた作品の上演も集中した。戦中・戦後を厳しく見据えた三好十郎の『その人を知らず』、文学座アトリエの『冒した者』と代表作が続いた。関東軍と癒着して軍需工場を拡大し、屍の上に巨万の富を築いた父と息子との葛藤を描いた、新国立劇場の安部公房『城塞』。文学座の真船豊の『中橋公館』などが重厚。田中千禾夫『マリアの首』など敗戦直後の日本を描いた作品を取り上げた。
創作劇では、永井愛が二兎社『ザ・空気』で報道の自主規制に正面から斬り込み、岩松了はさいたまゴールド・シアター『薄い桃色のかたまり』で震災を題材に取り上げた。古川健は『60’sエレジー』と『斜交』で、先の東京五輪の光と影をあぶり出した。翻訳劇は、名取事務所が上演した独裁政権の闇を描いた『屠殺人ブッチャー』が光った。 開館20周年の世田谷パブリックシアターは、野村萬斎芸術監督が木下順二の『子午線の祀り』を新演出で上演。今年85歳の仲代達矢はブレヒトの『肝っ玉おっ母と子供たち』で気迫を見せた。劇団チョコレートケーキの作、日澤雄介の演出で劇団昴が上演した『幻の国』は東独の秘密警察の話で、冷戦が終結する激動期に監視される市民と監視する側の相克葛藤を捉えるなど、現代演劇では、安倍政権による暴走政治に様々な角度から果敢に抵抗する舞台が多く生み出されている。
一方、各中小劇団の経営は深刻な厳しさが続く。前進座では今年初めて3・4月公演が打てず、PACでは都内最賃の引き上げの度に賃金制度を改定せざるを得ない状況が続くなど対応に苦慮している。
II. '18春闘の課題と取り組み
1. '18春闘の基本的な構え
- 安倍9条改悪、辺野古の新基地建設、原発再稼働、労働法制大改悪の断固阻止、映演各社の経営危機打開、平和と民主主義を取り戻し、働く者の生活と権利を守るため、生存権をかけ'18春闘を闘う。
- 映演労連を拡大強化し、要求実現力を強化して、8時間働いてまともな生活ができるベースアップ獲得と大幅賃上げ、非正規労働者の雇用と労働条件改善をめざし、本格的な産別春闘をさらに進める。
2. '18春闘の基本要求
- 生計費原則に基づいて活発な要求討議を行い、8時間働いてまともな生活ができる賃上げ、一時金の獲得をめざして18春闘を粘り強く闘っていく。
- 産別賃上げ要求では、「映演労働者に誰でも15,000円以上」の大幅賃上げ、すべての時間給労働者に時給150円以上の賃上げを勝ち取る。
- 定昇制度を確立している企業に対しては定昇の維持とベースアップを要求する。また、4月昇給を実現していない企業に対しては直ちに4月昇給を実現するよう要求する。
- 産別最賃制は、1日7.5時間、週5日間労働で、最低年収250万円を確保できる水準として時給1,500円とし、映演各企業との協定化を迫る。企業内最賃制の確立を各単組の春闘要求書に盛り込む。
- 映演各社の労働条件調査を進めて「映演労連2018春闘要求書」と「産別統一労働協約案」を充実させ、映演産業の労働諸条件、諸制度の均一化と底上げをめざす。「パワハラ防止規定」の制度化をさらに進める。
- いわゆる「2018年問題」(=改正労働契約法により、2013年4月1日以降に有期労働契約を締結・更新した場合、5年後の2018年4月1日から労働者は有期雇用から無期雇用への転換を申し入れることができる。また改正労働者派遣法により、同一の派遣労働者を派遣先の事業所における同一の組織単位に対し派遣できる期間は3年が限度となり、その最初の期限が2018年9月末となる)に際して、無期転換逃れなどの雇い止めを許さず、非正規労働者の雇用と権利を守る闘いに全力を尽くす。
- 映演産業を支えるフリー契約者、非正規労働者がまともに生活できる労働条件をめざし、賃金アップ、均等待 遇の実現、労働基準法適用、社会保険の適用など労働条件と雇用契約の改善を要求していく。「業務委託契約」を口実にした偽装請負を糾弾する。契約社員等の社員登用制度を各企業に迫る。また、映演各社に直接雇用を原則とすることを求める。
- 長時間過密労働の解消とサービス残業の一掃、過労死過労自殺の根絶をめざす。全事業所での三六協定締結を迫るとともに、特別条項の廃止をめざす。「継続労働15時間」「勤務間インターバル11時間※」「週の実労働時間60時間以内」「週1回の休日」を映演産業のルールとさせる。年間所定内労働時間1800時間以下の実現をめざす。
※勤務間インターバル…①終業時刻より連続した11時間の休息を保障する②インターバルが翌日の始業時刻に差し掛かる場合は労働したものとみなし賃金控除しない③インターバル内に就業させる場合は25%の割増賃金を支払う - 「高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ制度)」「過労死基準の残業上限規制」「格差の固定化」など労働者を奴隷化する一括法案「働き方改革推進法案」に断固反対しこれを阻止する。「過労死と職場における差別の根絶を求める国会請願署名」に全力を挙げて取り組む。
- 映演各社に、十分な防災対策、震災対策を講じるよう求める。
- 「映演労連18春闘要求の実現と産別統一労協の締結、リストラ合理化反対、安倍9条改憲阻止、労働法制改悪阻止、過労死・過労自殺の根絶、映演産業の危機打開のためのストライキ権」を2月下旬に確立する。
- 各労組の要求書は2月20日前後に提出し、映演労連団交は各単組回答前の3月~4月中旬までに集中させ、実効性を向上させる。各単組の団交には、必要に応じて映演労連役員が参加する。
労働条件改善要求の内、18春闘の核となる重点要求を設定し、独自の制度案を策定・提示して各社に改善を迫る
- 4月12または13日の映演労連18春闘セミナー、2月23日の「MIC18春闘決起集会」、3月7日の「国民春闘3・7中央行動」、3月15日の「国民春闘共闘全国統一行動」「映演労連産別スト」(映演労連統一行動)、4月6日の「夜の銀座デモ」(映演労連統一行動)、4月12~17日の「映演労連統一行動ゾーン」、毎月19日に取り組まれる「19日行動」、5月1日「第89回メーデー」(映演労連統一行動)などに積極的に取り組み、産別統一行動を強化して18春闘を盛り上げていく。厚労省交渉に継続的に取り組む。5月連休明けの闘いも重視する。
- 国民春闘全国統一行動に呼応し、3月15日に「18春闘要求実現、安倍9条改憲阻止、戦争法廃止、労働法制改悪阻止、過労死・過労自殺根絶」をメインテーマに産別統一スト(10~15分間程度/映演労連統一行動)を構える。併せて映演労連ニュース・スト特別号を全組合員に配布する。
映演労連の一斉回答指定日は4月11日(水)に設定し、4月12~17日を映演労連統一行動ゾーンとして単組独自のストを含め、昼休み集会や社前集会、時間内組合活動などを行い、映演各社に一斉回答を迫る。
- 組合員全員で闘う春闘をめざし、全組合員が一度は春闘行動に参加することを組織する。
- 「最低賃金・今すぐ全国一律1000円、将来的に1500円」の実現に向けて行動し、全労連や国民春闘共闘委員会が提起する行動に最大限参加する。
- 映演各社に、高齢者雇用安定法を遵守し、65歳定年延長も視野に、65歳までの雇用確保を要求する。60歳以降の賃金は、60歳到達時と同等とするよう要求する。
- 映演各企業の経 営危機には機敏に対応し、雇用と職場の確保を第一に闘いを構築する。リストラ「合理化」攻撃に対しては、産別ストを背景に闘う。日ごろから経営チェック能力を高めるとともに、事前協議制を確立する闘いを進める。経営者の横暴を許さない闘いを強化し、違法・脱法行為の一掃を目指す。
- 映演関連争議などリストラ「合理化」に備え、職場と雇用を守る闘いに全力を挙げる。必要に応じて争議対策委員会を再開する。
- 労働相談を継続し、映演産業労働者の雇用と職場を確保するとともに、いっそうの団結を図る。
- JAL、IBM不当解雇撤回の闘いや、MIC争議団、全労連争議団の勝利をめざして積極的に支援する。
- 映画各社、業界団体、関係省庁とフィルム映画文化の維持と映画原版保存にむけた協議・意見交換を継続する。「東京国立近代美術館フィルムセンター」の「国立映画アーカイブ」への改組・機能強化の動向を注視しつつ、文化庁・経産省・内閣知財本部に対し国立アーカイブ事業への支援・振興を促す。
- 改正「文化芸術基本法」に基づく「文化芸術基本計画」策定に当たって映画文化の公的支援の拡充を強く求める。
- 映職連や日映協、JAniCA(アニメーター演出協会)、映連などとの懇談を継続する。製作・配給・興行の働いている組合員を集めた部門別会議や映画産業政策委員会を行い、「映画振興要望書」を作成し、5~6月段階で経産省交渉と文化庁交渉を行う。
- 演劇産業政策委員会で演劇文化と舞台美術の振興に関する議論を更に喚起し、「演劇文化振興に関する要望書」を策定したうえで文化庁交渉を実現する。
- 各省庁の対応を形式的な回答に終わらせず、実情の改善につながる回答を引き出すよう工夫する。
- アニメ産業政策委員会を開催し、「アニメ産業改革の提言2018」の策定を目指し、アニメ関係者とアニメ業界に広めてアニメ労働者の劣悪な労働環境など産業の構造的な問題の解決を迫る。
- 放送局の一方的な番組製作費削減や権利剥奪など、放送局と番組制作会社の不公正な支配関係の改善をめざして行動する。
- 安倍9条改憲阻止、「戦争法」廃止の闘いを18春闘の最重要課題に位置づけ、それを中心に平和と民主主義を守る闘いを創意工夫して進める。全国市民アクションの提起する「安倍改憲NO!憲法を生かす全国統一署名(3000万署名)」の取り組みに全力を傾注する。
- 「映画人九条の会」の発展に向けてよりいっそう努力する。総がかり行動実行委員会や全国市民アクション、九条の会などが提起する諸行動に積極的に取り組む。
- 普天間基地の無条件返還を求め、辺野古への新基地建設強行を断固として阻止する。欠陥機オスプレイの基地配備を撤回させ、アメリカ追従の外交政策に反対して日米安保条約の廃棄をめざす。
- 秘密保護法、戦争法、「共謀罪」法廃止に向けた取り組みに全力を傾注する。
- 核兵器のない世界を目指す国内外の運動と連携を強め、日本政府に核兵器禁止条約の批准を強く求める。
- メディアの報道を監視し、不公正報道には機敏に抗議する運動を進める。ヘイトスピーチへの規制を強く迫るとともに、LGBT(セクシャルマイノリティー)支援強化を求める運動に連帯して闘う。
- 原発依存のエネルギー政策を、再生可能な自然エネルギー利用へ抜本的に転換させる。原発再稼働、海外輸出を許さず、原発ゼロの実現に全力を傾注する。
- 被災者本位の復興事業を実現させる。
- 地球温暖化防止に向けて労働組としても行動する。
- 平和運動推進委員会の自主的な活動をいっそう強化する。
-
国政選挙や地方選挙を通じて参政権を行使することが、平和と民主主義を破壊し生存権を脅かす悪政を正し、労働者・国民の声を実現する絶好の機会と位置付け、政党支持の自由・政治活動の自由を完全に保障しつつ組合での政治論議を強め、政治意識を高めて国民本位の政治の実現を目指す。
- 「組織拡大ロードマップ」を各単組で責任を持って具体化し、実践するとともに、毎月の進捗を点検し、組織人員1,200人台復活を目指す。
- 各単組は組織建設委員(組合員10人に1人)の選出・配置に取り組み、会社従業員の過半数の組織化をめざす。
- 日本舞台芸術家組合の組織拡大・強化に力を集中する。
- 各単組の「新入組合員学習会」等の場で映演労連中執との交流を通じて連帯強化を図る。
- 四役会議を定例化し、事務局体制を強化する。
- 映演労連フリーユニオンの拡大に「フリーユニオンカード」「フリーユニオンポスター」を積極的に活用する。多発するフリーユニオン争議に対応できる体制をつくる。
- 亜細亜堂労組結成に続いてアニメ労働者の組織化をさらに進める。
- 映演労連ニュースや映演労連ホームページ、パソコン・ネットワークなど教宣活動をより充実させる。各労組で連携して調査活動を強化し、産業情報の集中と主要労組の労働条件を集約し、春闘交渉に活用する。回答速報体制を強化する。
- 各労組とも、全労連初級教育制度「わくわく講座」の受講を拡げる。
- スト権の内容 = 「映演労連'18春闘要求の実現と産別統一労協の締結、リストラ合理化反対、安倍9条改憲阻止、労働法制改革阻止、過労死・過労自殺の根絶、映演産業の危機打開のためのストライキ権」
- スト権投票期間 =1月29日(月)~2月23日(金)
- スト権集約日 = 2月26日(月)
3. '18春闘の具体的な取り組み
4. リストラ「合理化」、雇用破壊に反対し、職場と権利を守る闘い
5. 映演産業の基盤拡充と映演文化発展をめざす闘い
6. 憲法改悪阻止と、平和と民主主義を守る闘い
7. 組織拡大と組織改革の闘い
III. 産別スト権の確立
'18春闘では産別スト権を確立して闘う。高率での確立をめざす。
IV. '18春闘の主な闘争スケジュール
月 | 日 | 予定 |
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1月 | 29日 | 産別スト権投票開始(2/23マデ) |
30日 | 18国民春闘決起集会(19:00~杉並公会堂) | |
31日 | 舞芸執行委員会(15:00~労連) 映演労連アニメ産業政策委員会(18:45~労連) |
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2月 | 7日 | 全労連組織拡大交流集会(13:30~全労連、8日まで) |
10日 | ▲安倍働き方改悪阻止!2.10決起集会(13:30~全労連2階) MIC就職フォーラム |
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19日 | 安倍改憲NO!2.19国会議員会館前行動(18:30~参議院会館前) | |
20日前後 | 映演労連各単組18春闘要求書提出 | |
22日 | 映演労連4中執(14:30~文京シビック3階障害者会館B会議室) | |
23日 | MIC18春闘決起集会(18:30~全水道会館)、産別スト権投票締め切り | |
26日 | 産別スト権集約 | |
3月 | 2日 | 映演労連第2回中央委員会/中央闘争委員会(18:45~) |
4日 | ●「原発ゼロの未来へ・福島とともに全国大集会」(13:00~日比谷野音、14:30~銀座デモ) | |
7日 | 18春闘中央決起集会(12:15~厚労省・人事院周辺 13:15~国会請願デモ) | |
9日 | 映演労連フリーユニオン第4回執行委員会(18:45~映演労連) | |
14日 | 18国民春闘集中回答日 | |
15日 | 18春闘50万人統一行動日・映演労連一斉ストライキ!【映演労連統一行動日】 MIC18春闘デモ(18:45虎ノ門~国会) |
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19日 | 安倍改憲NO!3.19国会議員会館前行動(18:30~参議院会館前) | |
21日 | ●さよなら原発3.21全国集会(13:30~代々木公園B地区、15時デモ出発) | |
28日 | 映画人九条の会「欠陥だらけの国民投票法!」(18:50~文京シビック5階C会議室) | |
30日 | MIC争議支援総行動(午後~DNP本社社前宣伝行動) | |
4月 | 6日 | 夜の銀座デモ(18:30~築地川銀座公園)【映演労連統一行動日】 |
11日 | 映演労連一斉回答指定日 | |
12日 | MIC神保町デモ(12:10錦華公園集合、12:25デモスタート)【映演労連統一行動ゾーン】 | |
1●日 | 映演労連18春闘セミナー【映演労連統一行動ゾーン】 | |
5月 | 1日 | 第89回メーデー&映演労連大交流会【映演労連統一行動日】 |
3日 | ●憲法集会(13:00~有明防災公園) |