I. '11春闘をめぐる情勢
1. 政治・経済の情勢
沖縄・普天間基地移設問題で躓き、職を投げ出した鳩山首相の後を引き継いだ菅政権は、昨年の参議院選挙で大惨敗を喫し、再びねじれ国会をもたらした。選挙後にはマニフェストを反故にする政治姿勢に転換し、政権存続と引き換えに「構造改革」路線へ回帰する政策を強めている。景気回復のために雇用を増やして内需を拡大させると謳っていながら、実際は大企業への優遇ばかりで、国際競争力のための法人税率の引き下げなど、一部の大企業の収益だけが「V字回復」するような措置を強めている。また財務省の主導による消費税率アップに意欲を見せ、社会保障改悪など、国民生活への圧力をかけつづけている。
個別企業の成長や儲け優先主義が強調され、はたらく労働者や国民の生活に対する企業の社会的責任放棄の動きは、自公政権時代以上に露骨になっている。雇用の安定や内需拡大の努力よりも、国際競争に勝ち残るためと、さらなる賃金カットや雇用流動化を中心とする人件費抑制や、下請企業への犠牲転嫁を強めている。
5%台で高止まりする失業率、全労働者の3分の1を超えた非正規雇用労働者の増加、12年間で労働者の年収が61万円も下がり、労働者の4人に1人が年収200万円以下となる一方で、大企業の内部留保は99年の245兆円から、この10年で441兆円へと1.8倍にふくれ上がっている。こうした貧富の拡大は、社会生活に深刻な「歪み」をもたらしている。毎年3万人を超え続けている自殺者の問題や無縁社会の形成などは、大企業の身勝手な経営姿勢と決して無関係ではない。
今年1月14日発足した菅再改造内閣はさらに財界やアメリカの言いなりとなって、消費税の増税や、農業、地域経済破壊のTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加を盲進しようとしている。また、武器輸出三原則の「見直し」や尖閣諸島問題に端を発す防衛力強化など、軍事大国化と日米軍事同盟のさらなる強化も推し進めようとしている。沖縄基地問題でも辺野古への移設をゴリ押しし、これ以上基地を増やすなという沖縄県民の声も封殺している。
昨年5月に改憲手続法が施行され、それによって衆参両院に設置することになった「憲法審査会」を始動させようとのくわだてもある。与党・民主党内でも改憲派の議員が多数存在し、勢力を伸ばした「みんなの党」や、自主憲法制定を党是とする「たちあがれ日本」など各政党や野党・自民党の改憲勢力などが「救国ネットワーク」的に結集している動きもある。この改憲論議の動向にも警戒する必要がある。
1年半の総選挙では国民生活を省みず、「構造改革」の名の下「小さな政府」作りに邁進し、自己責任を唱えた無責任な自公政権からの脱却を期待し、セーフネットを設け生活重視の政策を掲げた民主党政権を選択する審判を下した。しかし皮肉なことに「市民運動」で名を馳せた人間が権力を掌握したと同時に国民の声を無視して市民生活を破壊し、保守層と結託するような政権運営を担っているのが現状である。労働者・国民の期待を真っ向から裏切り、官僚主導や財界言いなり、そして対米従属の政治は交代させなければならない。
民主党政権の欺瞞を追及し、われわれ労働者や国民の生活第一の政治を取り戻すよう強く批判して行く必要がある。
2. '11春闘をめぐる経済界、労働界の動き
●経済界の動き
経団連は11春闘を迎えるに当たって、大手企業の業績好転を背景に定期昇給は容認しつつも手当や一時金を含む給与総額の引き上げについては拒否の姿勢を示している。その根拠にデフレの長期化等をあげ「賃金よりも雇用確保を重視する」としているが、相変わらず国際競争力を高める等といったコスト削減の必要性も同時に強調している。
また、TPPを視野に「海外に打って出る気概を持った人材育成が重要」と、一昨年の経済危機に対する反省もないままに外需頼みの方針をここでも垂れ流している。
なお、富士通総研は昨年11月1日、連合の主催する「2011春季生活闘争中央討論会」で賃上げ4%の必要性を訴えた。
●労働界の動き
連合は12月開催の中央委員会で今後5年程度をかけて97年水準への賃金回復を目指すとしながらも、ベア要求については踏み込まず「給与総額1%引き上げ」を掲げるに留まった。リーマンショック以降2年連続でベア統一要求を見送り、昨年同様に「定昇維持」と「雇用確保」を主題とした。傘下の自動車総連や電機連合も同様であり、莫大な内部留保を抱える企業内労組の腰が引けた姿勢には各方面からも批判が多い。
また、昨年は掛け声だけに終わった非正規労働者の賃上げについて、正社員以上の引き上げを求めるとしている。
国民春闘・全労連は「すべての労働者の賃上げ・雇用確保を、実現しよう内需主導の景気回復」をスローガンとする春闘方針を確認している。世界で日本だけが賃金相場が低下する異常な実態を直視し、重点課題として、(1)賃上げについては全職場での要求提出と「誰でも時間額100円以上、月額1万円以上」の引き上げ基準を、(2)労働時間については「週60時間以上労働者の根絶」などを柱に取り組む、(3)最賃闘争については公契約条例運動の前進とともに「全国一律時給1000円以上」を目指す、(4)雇用確保の闘いでは安定した良質な雇用を追求するものとし、(5)社会保障の拡充では「福祉国家」の実現を目指す、(6)平和の問題では沖縄問題を始めとする日米軍事同盟強化と軍事大国化に反対し、衆議院比例定数削減など新たな改憲策動に反対すること等を確認している。
これらの要求前進のため「目に見え音に聞こえる春闘」作り出そうと、各統一行動のほかディーセントワークデー(毎月第3金曜)、最賃署名など様々な取り組みを提起している。
3. 映画・映像産業の情勢
(1) 映画産業の情勢
2010年の日本映画界の興行収入は2,200億3,700万円となり、過去最高を記録した(前年は2,060億3,500万円)。洋画・邦画別に見ると、米メジャースタジオの3D映画のメガヒットが続き、洋画が大きく伸ばしたが、邦画も1社で748億円の興行収入を叩き出し過去最高益となった東宝配給作を中心にヒットを重ね、結果的には邦画53.6%、洋画46.4%となった(前年は邦画56.9%、洋画43.1%)。入場者数は174,358千人(前年比103.0%)
なお、邦画と洋画を合わせた2010年の作品別興収上位10本のうち、3D映画は6作となっている(「アバター」「アリス・イン・ワンダーランド」「トイ・ストーリー3」「THE LAST MESSAGE 海猿」「カールじいさんの空飛ぶ家」「バイオハザード4」)。米メジャースタジオは完全に3D映画へ制作体制をシフトさせているが、資本力に劣る日本映画界は、果たしてこの流れについていくことが出来るのかが今後の課題となる。
興行収入だけ見ると好況のように見えるが、映画産業は興行収入よりも大きいDVD市場を核とした二次利用の収益で支えられており、その肝心のDVDマーケットが2004年以降大幅に売上をダウンしているため、完全な構造不況に陥っている。特にインディペンデントの映画会社は経営難に陥っており、倒産や事業縮小、再編が進んでいる。2010年でいうとシネカノンが民事再生を申請し、トルネードフィルムが倒産。角川映画は、経営不振から2011年1月をもって角川書店に吸収合併された。これに比例し海外のインディペンデントの新作の輸入本数は大きく減少・邦画のインディペンデント作品のヒット作も減少。大作ばかりに観客が集中し、日本の映画文化の多様性が損なわれつつあると言える。
興行収入のアップにもかかわらず、興行会社も厳しい状況が続いている。2004年は全国2,825スクリーン・1スクリーン平均7,466万円だったが、2010年は全国3,412スクリーンで、1スクリーン当たりの平均興収は6,469万円に落ち込んだ。こうした収益性の低下を受け、2000年代一貫して伸び続けてきたスクリーン数は、2010年度でピークを迎えると思われ、来年度はスクリーン数が減少に転じると予想される。過当競争に加え、3D映画への動員集中を受け急激に進むデジタルシネマ化によるコスト増が興行会社の経営を圧迫している。
更に安定経営のTOHOシネマズは「料金値下げ」(一般1,500円、18歳未満1,000円)を打ち出したが、その影響と是非についてはじっくり見極める必要がある。
他方、デジタルシネマ化に伴い、ODSと呼ばれる通常の劇映画ではない映画の上映が盛んになっている(衛星放送を用いたAKB48のイベントの生配信や、Mr.Childrenのライブ映像の期間限定上映など)。
また、一時期はブームとまで言われたミニシアター系劇場は、インディペンデント映画会社の凋落にあわせ劇場数を減らし、2010年、シネマライズは3スクリーンから1スクリーンに、渋谷シアターTSUTAYA、シネマ・アンジェリカの2館は休館、シネカノン有楽町も1スクリーン減となり、2011年は恵比寿ガーデンシネマ、シネセゾン渋谷の閉館が決定している。
こうした映画産業全体の危機を受け、映画制作の現場の歪みも大きくなっている。製作途中で資金繰りに行き詰まり公開出来なくなるケースや、製作費の極端なダウンから現場スタッフの生活が圧迫され、才能あるスタッフが映画界を去っていくといった悪循環が起こっている。こうした状況を踏まえ、日本の映画文化を守るためには、公的助成のいっそうの充実が必要である。また、デジタルシネマ化の波を受け、各ラボも経営基盤が揺らいでいることを付記する。
2010年には、各社撮影所がリニューアルを実施した。東映は大泉学園の東京撮影所内に音声から映像までデジタル処理する「東映デジタルセンター」等を竣工した。東宝は成城の東宝撮影所内にポストプロダクションセンター等を完成させ、更にスタジオをIMAGICA、東京現像所等と高速回線で結んだ。角川映画も、ポストプロダクション部門の増設を含めたリニューアルが2011年夏完成予定。日活も老朽化が進んでいた日活撮影所をリニューアルした。
(2) 映像ソフト業界の状況
2010年7月24日についにアナログ放送が終了する。家電業界やケーブルテレビはより活発化されるだろう。当然、ソフトに与える影響も大きい。
JVA(日本映像ソフト協会)が1月6日発表の「ビデオソフト売上速報」によると、2010年1月〜11月のビデオソフト売上累計は2,321億8,400万円(前年対比95.6%)、DVD売上げが1,923億6,900万円(構成比82.9%)、ブルーレイが397億2,800万(構成比17.1%)。ブルーレイの構成比は、単月ごとの推移で見ると10月〜11月と20%を超えて微増しており、前年同期比(1月〜11月)も198.9%と大幅に伸びているとはいえ、DVDを含めた映像パッケージ全体の売上は冷え込み傾向で、DVDの落込みをブルーレイがカバーするまでには至っていない。
販売とレンタルの比較で見ると、2010年11月実績でブルーレイ・DVDの両メディアを加算して市場別に見てみると、「販売用」が172億5,300万円(前年同月比111.9%)、「レンタル店用」が75億6,300万円(同82.7%)。ブルーレイの伸長に「販売用」は前年を大幅に上回ったものの、切り替えが遅れている「レンタル店用」の前年割れが響き、全体としては前年とほぼ同水準の結果となっている。
JVAレンタルシステム加盟店数の推移を見ると、2010年12月で5,981店、もっとも多かった1995年12月の12,454店と比較してほぼ半分に減少。衛星放送やネット配信の影響やゲームやインターネット利用と選択の余地が多様化してきている状況や、TSUTAYAなど大手への集中も影響していると言えるだろう。
今後の課題として、著作権保護はより一層大きなテーマとなるだろう。現状は、CSSやAACSという著作権保護技術に対し、リッピングソフトを用いてネット上の無許諾公衆送信が大量に行われている状況にある。著作権法や不正競争防止法が、今のデジタル世界で実効性のある法規制ができるよう法改正がなされることが望まれる。
(3) テレビ業界の状況
7月24日のアナログ停波まで残り僅か。受像機の低廉化やエコポイントの駆け込み需要で世帯普及率は90%台に達したが、受信障害対策施設のデジタル化は進まず、集合住宅等でも未対応施設が関東で17%と言われている。低所得者への緊急対策など、予算措置の大幅拡大がなければ「デジタル難民」の発生は今なお避けられそうにない。
一昨年来落ち込んでいた広告収入では企業収益の回復に伴って広告市場が活況となり、昨年を上回るスポットCM(時間や番組の指定なしに放送)収入が見込まれている。タイムCM(番組提供スポンサーCM)についても底打ち感が表れ、キー局の各中間連結決算では日テレ・CX・テレ朝の3局が増収増益に転じている。
しかし、番組制作費の切り下げの影響は大きく、各制作会社の経営を直撃している。ATPが昨年実施したアンケートでも局からの制作費削減要請を受けた会社は全体の56%に上り、その減額幅は15%に及ぶとしている。
関連する事業体としてはラジオの苦境が挙げられる。昨年は地方FM局の破綻が相次いだ。9月には地上放送事業者として初めて愛知国際放送がラジオ放送からの撤退を決めている。総じてラジオに対する広告収入の減少が原因だが、その一方で難聴対策であるラジコなどIPサイマルラジオ(=ネット上で同時配信)の登場で、若年層などの新たなリスナー開拓として、ラジオ市場の復活に期待が高まっている。
(4) アニメ産業の状況
●行政とアニメ産業の対立にまで発展した「東京都青少年健全育成条例」
表現の自由を侵害するとして漫画家、出版社をはじめとする都民の強い反対で昨年6月に継続審議となった「東京都青少年健全育成条例改正案」が、規制を強化した内容でほとんど審議もされずに昨年12月に可決された。この問題は、アニメ産業振興をともに進めてきた行政とアニメ業界の対立に発展している。
東京都に対する抗議の意味で漫画出版10社は、石原都知事が実行委員長を務める東京国際アニメフェア(TAF)への参加中止を表明した。アニメ業界8社は、同様のイベント「アニメコンテンツエキスポ」をTAFと同日の3月26、27日に行うことを発表している。TAFを運営受託している日本動画協会は、実質的に実行不能な状態にあると昨年12月に発表した。
他にも、行政と業界団体の間で軋轢が生まれている。杉並アニメミュージアムも、杉並区の事業仕分けにより存亡の危機にあるという。
●テレビ、映画、ビデオともに縮小が続くアニメ産業
アニメ産業は、帝国データバンクの調べによるとアニメ制作会社118社の2009年度の収入高総額は1648億3千万円と2年連続で減少している。うち、増収38社、横ばい41社、減収55社となっている。
正月興行の劇場アニメは、「劇場版イナズマイレブン最強軍団オーガ襲来」と「シュレックフォーエバー」がベストテン入りしたのみ。本数が減ったせいもあり、昨年までのように劇場アニメが上位をしめることは無くなった。ビデオソフトの売り上げは2010年上半期(1月から6月)で1194億2400万円(前年同期93.6%「日本のアニメ」が売り上げの21%を占める)。ブルーレイが前年の倍以上売り上げ(同209%)を上げているがDVDの落ち込み(同85.5%)をカバーするまでにはなっていない。
事業の主力である地上波番組数は、1月9日現在で52本(東映アニメ調べ。再放送、再編集番組を除く。内23本がテレビ東京系列での放映)。深夜アニメは6本。土日は計20本となっている。
日本動画協会の会員アンケートによると、09年のアニメ各社の売り上げは商品化権収入こそテレビ放映連動型キャラクターで06年より1割同増だが、製作収入で3割、ビデオ販売4.5割、海外5割減となっている。娯楽の多様化、少子化、出版、テレビ業界の不況等アニメをめぐる環境に回復の兆しは見えない。
4. 演劇界の情勢
歌舞伎界は、昨年暮れの海老蔵事件に続き、富十郎の逝去、愛之助、勘三郎、芝翫(しかん)の休演とトラブルが続いている。東京では1月演舞場、浅草、国立劇場、ル・テアトル銀座と四座に分かれての歌舞伎公演となっている。各座一定の盛況をみせているがどの公演も三等の一番安い席から売り切れになる状況にあり、長引く不況を反映している。
また、日本劇団協議会や児童青少年演劇劇団協同組合傘下の各劇団は、どこも年末から正月にかけてさらに苦しい劇団運営にさらされている。舞芸組合に参加する各劇団も、現行の給与水準を維持するのも難しい状況になってきている。風の子では中国・四国地方の事務所を閉鎖せざるを得なかったり、前進座も3〜4月一回も公演がないという厳しい現状にある。
加えて、23年度の文化庁の予算案では、総額は微増になったものの、「芸術創造活動への支援と人材育成」では12億6100万円減となり、芸術活動への支援は実質的に減額となり、舞台芸術の創造団体には大きな打撃となっている。
ミュージカルは、東宝が「ゾロ ザ・ミュージカル」(日生劇場)、「アンナカレーニナ」(シアタークリエ)、「滝沢革命」(帝劇)の各劇場で公演し、一定の集客を図っている。劇団四季の各劇場は横ばいといったところだが、やはりミュージカルの方が動員力を維持している。
内需の拡大が進むような政策を国が実行していかないと、国民は観劇などの余裕がなくなり、観客動員への影響が強く出てくる。中でも賃上げ闘争の役割が今年ほど大きな課題となる年はないと思われる。
II. '11春闘の課題と取り組み
1. '11春闘の基本的な構え
- 産業情勢と映演各社の経営危機に立ち向かい、生活向上・生活防衛に足る賃上げ、一時金の確保をめざす。
- 「単組ごとの春闘」から脱却し、本格的な「産別春闘」を展開する。正社員中心の従来型春闘から、非正規労働者を含めた新しい形の「産別春闘」構築をめざす。
2. '11春闘の基本要求
- 「経済不況だから」あるいは「会社の経営が厳しいから」と自らの要求を縛らず、生活出来うる賃金・賃上げ・夏季一時金の確保を基本に職場での活発な議論を展開し、その議論を背景にした要求に確信を持って'11春闘を粘り強く闘っていく。
- 「映演労働者に誰でも10,000円以上」の産別賃上げ要求に基づいた大幅賃上げ、すべての時間給労働者に時給100円以上の賃上げを勝ち取る。
一時的な「利益減少」に惑わされず、内部留保や溜め込んだ資産、含み資産を明らかにするなど、正確な経営分析に基づいて賃上げ、一時金の抑え込みをはね退ける。 - 定昇制度を確立している企業に対しては定昇の維持とベースアップを要求する。また、4月昇給を実現していない企業に対しては直ちに4月昇給を実現するよう要求する。
- 産別最賃制は、月額16万円、日額8,000円、時給1,000円(=いずれもキャリア・ゼロの場合)とし、映演各企業との協定化を迫る。企業内最賃制の確立を各単組の春闘要求書に盛り込む。
- 「映演労連2011春闘要求書」とともに「産別統一労働協約案」を一層充実させ、映演産業の労働諸条件、諸制度の均一化と底上げをめざす。映演労連の「パワハラ防止規程案」をもとに映演各社に早期の制度化を迫る。
- 「派遣切り」や有期雇用の雇い止めを許さず、非正規労働者の雇用と権利を守る闘いを前面に掲げる。非正規労働者がまともに生活できる労働条件をめざして、賃金アップ、均等待遇、労働基準法適用、賃金・労働条件と雇用契約の改善を要求していく。特に労基法適用闘争を重視する。また、「業務委託契約」を口実にした偽装請負を糾弾する。契約社員等の社員登用制度を各企業に迫る。
- '11春闘アンケートの長時間労働などの結果を重視し、長時間労働とサービス残業の解消をめざす。「継続労働15時間」「インターバル11時間」「週の実労働時間60時間以内」「週1回の休日」を映演産業のルールとさせる。またワーク・ライフ・バランスを就労の原則にさせる。
- 「労働者派遣法の抜本的改正」「最低賃金1000円」の実現を、映演労連としても'11春闘の中心課題とする。
3. '11春闘の具体的な取り組み
- '11春闘の産別統一スト権を早期に確立する。
- 各労組の要求書はできるだけ早めに提出し(2月下旬か3月初旬)、スタート良く闘う。
映演労連団交は各単組の回答が出る前に行うこととするが、今年は3月中の開催をめざす。また各単組の団交には、必要に応じて映演労連役員が参加する。 - 3月17日に開催する「映演労連2011春闘学習決起集会」(執行委員セミナーを兼ねる)を必ず成功させる。
- 2月10日の「2・10国民春闘統一行動」、3月3日の「3・3国民春闘統一行動」、3月4日の「MIC 2011春闘決起集会」、3月17日の「3・17国民春闘統一行動」「映演労連2011春闘学習決起集会」(映演労連統一行動)、3月下旬の回答追い上げ全国統一行動、4月1日の「夜の銀座デモ」(予定/映演労連統一行動)、4月14日の「4・14国民春闘統一行動」「映演労連産別スト」(映演労連統一行動)、5月1日「第82回メーデー」(映演労連統一行動)などに積極的に取り組み、産別統一行動を強化して'11春闘を盛り上げていく。
また、今年も3月段階で厚労省交渉を行う。5月連休明けの闘いも重視する。 - 国民春闘共闘の回答指定日は3月16日だが、映演労連の一斉回答指定日は今年も現実的に考えて4月13日(水)に設定し、4月14日(木)に産別統一スト(10分間程度/映演労連統一行動)を構えて、映演各社に一斉回答を迫る。その意思統一と準備のために、オルグ・教宣活動を積極的に展開する。また、妥結日も揃えるよう努力する。回答速報体制も強化する。
- 「労働者派遣法の抜本的改正」「最低賃金1000円」の実現に向けて、その署名活動に積極的に取り組み、全労連や国民春闘共闘委員会が提起する行動に最大限参加する。
4. リストラ「合理化」、雇用破壊に反対し、職場と権利を守る闘い
- 映演各企業の経営危機には機敏に対応し、雇用と職場の確保を第一に闘いを構築する。資本の勝手なM&Aは許さない。リストラ「合理化」攻撃に対しては、産別ストを背景に闘う。各企業ごとの経営分析・対策会議を再開する。日ごろから経営チェック能力を高めるとともに、事前協議制を確立する闘いを進める。また、経営責任・雇用責任を厳しく追及する。経営者の横暴を許さない闘いを強化する。
また、労基法違反、労働契約法違反、派遣法違反、不当労働行為などの違法・脱法行為の一掃を目指す。 - 東映アニメ千田さんの解雇撤回闘争は東映アニメ闘争支援共闘会議を中心据え、裁判闘争、団体署名、抗議ファックス集中、街宣・要請行動などに、映演労連の総力を上げて取り組む。また契約労働者の労働基準法適用を闘い取る。
- 角川書店に吸収合併された角川映画においては、当該労組との緊密な連携態勢の下、新たなリストラ「合理化」を警戒し、リストラ対策会議を中心に即応できる体制を確保し、映演労連の最重点闘争として取り組む。歌舞伎座改築による「歌舞伎座不況」について松竹資本の責任を追及し、舞台美術関係のリストラと労働条件切り下げを許さない闘いを進める。
- 映演労連フリーユニオン・ラピュタ支部の闘い、東映東撮支部、PACなどの闘いを全面支援する。多発するフリーユニオン争議に対応できる体制をつくる。派遣先会社との団体交渉を実現する。
- 「整理解雇4要件」を無視し、希望退職募集数が目標を上回ったにもかかわらず強行された日本航空の不当解雇は、全労働者の問題である。JAL不当解雇撤回の闘いを全面的に支援する。
また、MIC争議団、全労連争議団の勝利をめざして、積極的に支援する。
5. 映演産業の基盤拡充と映演文化発展をめざす闘い
- 映画文化への公的支援の柱である「優れた芸術活動への重点支援」の2分の1縮減方針の撤回を強く求める。日本映画への公的助成の拡大を実現するため、改めて「日本映画振興基金」の設立を求める。映画への公的助成を口実にした政治介入を排除し、映画の表現の自由を守り、公正な助成を取り戻し、公的助成の後退を阻止するため、多くの映画人、映画団体と共同して闘う。
- 「映画振興要望書」や「日本映画振興基金」の背景となる運動を強化するため、日映協やアニメーター演出協会、映職連、映連などとの懇談を行う。製作・配給・興行の現場で働いている組合員を集めた部門別会議や産業政策委員会を行う。
その活動の成果を活かし、5月段階で文化庁交渉や映連交渉などを行う。また映演産業に働くものの社会的地位の向上に活かすため、厚生労働省交渉や映画議員連盟、民主党への要請を進める。 - 演劇政策委員会で作成した「演劇文化振興に関する要望書」を改訂し、「事業助成」から「団体助成への転換」、自己負担金枠の撤廃、前払い制度の実現などに向け文化庁との交渉を開始する。
- 「アニメ産業改革の提言」をアニメ関係者とアニメ業界に広め、大きな共同をめざす。フリーユニオンのアニメ労働者を拡大してアニメ支部を結成し、東映動画労組とともに「映演労連アニメ部会」を設置するなどして、アニメ分野の活動を強化する。
- 放送局の一方的な番組製作費削減や権利剥奪など、放送局と番組制作会社の不公正な支配関係の改善をめざして行動する。
6. 憲法改悪阻止と、平和と民主主義を守る闘い
- 憲法改悪阻止の闘いを11春闘の中心課題に位置づけ、それを中心に平和と民主主義を守る闘いを創意工夫して進める。
- 「映画人九条の会」の発展に向けてよりいっそう努力する。各単組は「映画人九条の会」への組合員加入を再度進めるとともに、会社・事業所・職場ごとに「映画人九条の会・○○」を作る。
- 「武器輸出三原則」見直しを含む「防衛計画大綱」に反対する。尖閣列島や北方領土などの領土問題を口実にした日米安保体制強化や自衛隊の「離島配備」、動的抑止力などの動きに反対する運動に積極的に参加する。
- 衆議院比例定数削減など新たな改憲策動に反対する。また「憲法審査会」の具体化など明文改憲につながる動きには強く反対する。
- 地球温暖化防止にむけて、労働組合としても行動する。DVD「地球の温暖化をとめて」を活用して学習を進める。「環境にやさしい働き方(グリーンジョブ)」を各経営に求める。
7. 組織拡大と組織改革の闘い
- 昨年1300人にまで減員した映演労連の組織人員を1400人へ早期に回復させる。
- 映演労連フリーユニオンの拡大と、多発するフリーユニオン争議に対応できる体制をつくる。
映演労連フリーユニオンが作成した「映演労働者2011年実態調査アンケート」を非組合員、非正規労働者も含めて広範に実施し、組織拡大・組織改革の闘いにつなげるよう取り組む。 - 11春闘期間中も、映演労連の「専従者1.5人体制」を実現・維持に必要な財政を確立するための組合費値上げについて財政検討委員会での検討を促進させる。
- 教宣活動を重視し、「映演労連ニュース」「映演労連ホームページ」「パソコン・ネットワーク」をより充実させる。
III. 産別スト権の確立
'11春闘では産別スト権を確立して闘う。高率での確立をめざす。
- スト権の内容 = 「映演労連'11春闘要求の実現と産別統一労協の締結、リストラ合理化反対、雇用破壊阻止、映演産業の危機打開のためのストライキ権」
- スト権投票期間 = 2月4日(金)〜3月10日(木)
- スト権集約日 = 3月11日(金)
IV. '11春闘の主な闘争スケジュール
月 | 日 | 予定 |
---|---|---|
2月 | 4日 | 産別スト権投票開始 |
10日 | 2・10国民春闘統一行動(11:00〜厚労省前行動、12:00〜国民要求実現2・10中央集会/日比谷野音〜デモ) | |
第3回東映アニメ千田解雇裁判(16:30〜弁論準備・地裁13階民事36部) | ||
11日(土) | 角川映画労組定期大会 | |
25日● | 第2回財政検討委員会(18:45〜映演労連) | |
26日(土) | 日活労組定期大会 | |
27日(日)〜28日 | MIC争議研究集会(上郷・森の家) | |
3月 | 初旬 | 各労組'11春闘要求書提出 |
3日 | 3・3国民春闘統一行動、東映アニメ抗議FAX集中日 (〜4日) | |
4日 | MIC 2011春闘決起集会 (18:30〜文京区民センター3A) | |
9日 | 東映アニメ支援共闘第2回幹事会 (15:00〜文京区民センター3B) | |
11日 | 映演労連スト権集約日 | |
16日 | 国民春闘第1次集中回答日 | |
17日 | 3・17国民春闘統一行動 【映演労連統一行動】 | |
映演労連11春闘学習決起集会 (18:50〜文京シビックセンター4階ホール) | ||
28日 | 映演労連中央闘争委員会 (18:50〜文京シビックセンター5階A) | |
4月 | 1日 | 夜の銀座デモ 【映演労連統一行動】 |
13日 | 映演労連回答指定日 | |
14日 | 映演労連一斉ストライキ、4・14中央行動 【映演労連統一行動】 | |
5月 | 1日 | 第82回メーデー 【映演労連統一行動】 |