2009年2月25日

声 明 申請以来1年8カ月!
遂にマッスルミュージカル労災が画期的認定

映画演劇労働組合連合会(略称・映演労連)
映演労連フリーユニオン・マッスルミュージカル支部

 07年6月14日に渋谷労働基準監督署(後日、中央労基署へ事件が回送)へ申し立てていた元マッスルミュージカル団員の組合員A子さん(20代女性)の労災がついに認定されたことが2月9日わかりました。事故は06年5月、マッスルミュージカルとして出演したTV番組収録中の左膝の靱帯断裂。運営会社の(株)デジタルナイン(代表・樋口潮)はA子さんに対して「病院へは自分の保険証を使って行ってくれ」「自宅で怪我をしたことにしろ」としたほか、復帰するまで被災者に対して“月額15万円の制作バイト”という雑用係を命じるなど信じがたい対応をしていましたが、中央労基署によって本事件が正式に労働災害であったことが認められたのです。

 本件が画期的な成果と言える理由は、A子さんの労働者性の認定にあります。今回の労災認定における最大の争点こそ、この労働者性にあったのです。

 事故そのものは会社も認めるところでしたが、団体交渉でも会社は「被災者との契約は出演契約であって雇用契約ではない」と主張していました。確かに、団員であるA子さんと会社で取り交わした契約書は一年間の「出演契約」のスタイルでした。しかし、問題は就労の実態です。労基法上の労働者性は,同法9条の「使用される者」として,労務受領者と供給者との間に指揮命令の関係があるかどうかで判断されています。労働者性についての行政解釈は,労働基準法研究会の報告書「労働基準法の『労働者』の判断基準について」(85年12月19日)があり、芸能関係者については労働基準法研究会労働契約等法制部会の労働者性検討専門部会報告があります。同報告の労働者性判断要素によれば、指揮命令や拘束性などの使用従属性、さらには事業者性や専属性の程度などが補強要素とされているのです。今月23日、調査を行った中央労基署に確認を求めたところでも、最大のポイントはA子さんが指揮命令下の労働者と認定できるかどうかであり、その調査と判断に長期にわたる時間を要した、と説明しています。

 マッスルミュージカルでは、様々なスポーツの分野で秀でた若者がオーディションなどを経て舞台に立っていますが、彼らが自分勝手に舞台上で飛び回っている訳ではなく、緻密な演出と稽古の積み重ねは当然のこと、楽屋の掃除や衣装の整理洗濯に至るまで、会社の指示や命令がなければ成立し得ない実態があったのです。拘束時間の長さにしても、時間に換算して年間2,000時間近い拘束(06年当時)となっていたのです。稽古に関する勤怠管理は会社指示によって厳密に行われ、会社が指示するスケジュールの遵守も求められてもいました。

 今回のように、契約内容の形式面だけで判断せず、舞台出演者であるパフォーマーについて労働の実態から労働者性を認定した事例はそれほど多くはありません。労働者性の問題もありますが、申請すら諦めて泣き寝入りしている方が多いからだと推測されます。今回の労災認定は、安心して働ける労働環境を目指したパフォーマーが労働組合に結集したからこその成果だと考えます。

 私たちは今回の画期的な成果をうけて、会社に対して労災適用事業所として団員全てを労災支給の対象とすることや、労基署に対しては同事業所への労働安全衛生に関する指導強化を求めていきます。

 同時に私たちは、今回の労災認定をきっかけに、安心して働けるパフォーマーの労働環境整備をマッスルミュージカルだけでなく広く呼び掛けていきたいと思います。

以上
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