憲法違反の国葬強行に反対する声明

 岸田政権は今年7月の参院選街頭演説中に襲撃され死亡した安倍晋三元首相の「国葬」を閣議決定し、9月27日に強行しようとしている。

 私たち映演労連は、法的根拠を持たず、憲法が保障する「法の下の平等」「思想・良心の自由」を侵し、国民に弔意を強要する「国葬」強行に断固反対し、中止を求めるものである。

 岸田首相は、「国葬」を実施する理由について「歴代最長の期間、総理大臣の重責を担い、内政・外交で大きな実績を残した」等の説明を繰り返すのみで、合理的理由を何ら示していない。時の内閣や政権党の政治的思惑によって、特定の個人について「国葬」を実施することは、憲法14条が規定する「法の下の平等」を棄損するものであることは明白である。

 そもそも「国葬」は、明治憲法下、天皇の勅令としてあった「国葬令」に基づき、天皇や皇族とともに、「国家に偉勲ある者」に対して、天皇から「賜る」ものとして執り行われてきたものであり、根拠法たる「国葬令」は、日本国憲法の国民主権や基本的人権に反するものとして1947年の終了をもって失効している。現在「国葬」を行う法的根拠は全くない。

 1967年に吉田茂元首相の「国葬」が実施された際には、翌年の国会で当時の大蔵大臣が「法的根拠はない」と答弁しており、1975年に佐藤榮作元首相が死亡した際に「国葬」の実施が検討されたときも、「法的根拠が明確でない」とする当時の内閣法制局の見解等によって見送られ「国民葬」として執り行われた。以後首相経験者の葬儀は内閣・自民党合同葬として執り行われてきた。

 今回政府は内閣府設置法を持ち出しているが、同法は他省庁と区別した内閣府の「所掌事務」の範囲を明確にする組織規範にすぎず、「国葬」実施の根拠法とはなり得ない。

 これを閣議決定のみで強行し、日本社会全体に同調を迫り、国民に「弔意」を事実上強制することは、憲法19条が保障する「思想及び良心の自由」を侵す重大な違反行為である。

 その上「国葬」の実施には、国費が投じられようとしている。政府は、会場設営費などとして、今年度予算の予備費からすでに支出を決めている約2億5,000万円に、警備や外国要人の接遇費などとして、14億円余りが追加され、総額が16億6,000万円にのぼる見通しを示している。憲法違反である「国葬」に対し、国会での説明も議決もなしに、国民の血税を使うという暴挙は断じて許されない。

 私たちが働く映画演劇産業は「平和と民主主義」「言論表現の自由」と同じく、「法の下の平等」「思想、良心の自由」を礎として成立する産業である。

 私たち映演労連は、憲法違反の「国葬」強行に断固反対し、中止を求めるものである。

以上
2022年9月16日
映画演劇労働組合連合会

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