映演産業に従事するフリーランスへの
新型ウイルスの影響

　今般の新型肺炎ウイルスの影響は、ライブエンタテインメントを中心に日々深刻さを増している状況です。既に映画館や演劇公演の延期・中止が相次いでおり、企業活動そのものへの影響と同時に、労働者への対応が重要課題となっています。

　働く者にとって、新型ウイルスによる「感染の疑いが生じた」「実際に罹患した」「子どもや介護等の事情」「業務の延期・中止」など、それぞれの局面で課題が生じています。その全てが、何らかの補償がない限り、労働者の家計に直結する問題です。

　映演労連傘下の企業内組合による情報では、直接雇用の関係にある従業員対応については徐々に整理されつつありますが、派遣労働者や外部委託、個人事業主等についてはそれぞれに契約内容や条件が異なるため、総じて対応が後手に回っているという実態です。

　このように、現時点では雇用関係がある限り、一定の補償が得られる状況が整いつつありますが、アニメを含む映演産業では雇用関係の立証が困難なケースが少なくなく、このままでは何の補償も得られない事案が多数生まれかねません。

　一方で、フリーランスと称される労働者でありながら、実際には指揮命令が存在し、場合によっては時間も就業場所も拘束されているなど、雇用関係とほぼ変わりのない状況下で働いている実態は少なくありません。

　「雇用関係の有無」という狭い定義に囚われず、産業を支える全ての人が、生活を営めるだけの補償が得られるような万全の対応を政府が早急に準備すること。そして、各企業・団体は政府対応を待つことなく、直ちにフリーランスに対して、少なくとも雇用労働者と同等の補償を行うべきだと考えます。

　以下に、映演労連フリーユニオン（個人加盟労組）が集約したこの間のフリーランス（個人事業主、委託契約、請負契約など）に関する個別の実情について簡単にご報告いたします。



【映画・映像関係】
・映画スタッフＡ　海外ロケ（中国）に同行予定だが、決まっていたスケジュールが当面延期となり、現在は連絡待ちの状態。製作中止になったら報酬がどうなるのか不安を抱えている。

・映画スタッフＢ　地方ロケを準備しているが、エキストラを集めるのに苦慮している。また、撮影許可を得ていたところから、感染予防ためとの理由で使用が取り消されるケースもある。現状は撮影延期になっていないが、仮に延期となれば制作費の大幅な増加は避けられないし、延期分の追加報酬にも影響しかねない。

・映像スタッフＣ　幼稚園の卒園式撮影依頼を受けていたが、新型ウイルスの影響により、撮影中止か、現地スタッフの削減（3名→1名）か、どちらにするか園側の連絡待ち。個人的に受けているような仕事なので、仮に中止となれば報酬ナシにならざるを得ない。

・映画俳優Ｄ　　いくつかオーディションを受けたが、予定を過ぎてもどこからも返事が来ない。先のスケジュールが決められず困惑している。

【演劇関係】
・演劇学校講師Ｅ　新型ウイルスの影響で、予定されていた修了時期が早まり、その分の報酬がどうなるか、連絡待ちの状態。

・演劇学校講師Ｆ　卒業公演を予定していた公共施設より「不特定多数の来場者禁止」が通知され、関係者だけによるゲネプロに変更せざるを得なかった。生徒らの晴れの舞台を準備できなかったことが悔やまれる。

・舞台俳優Ｇ　　　個人でアクションスクールを運営。感染防止のため生徒にスケジュール延期を要請しているところ。現状はそれで済んでいるが、仮に延期や振替が困難で、授業料の払い戻しとなれば身銭を切るしかなく、施設使用料を考慮するとかなりの赤字を抱えかねない。

【アニメ関係】
・アニメ演出家Ｈ　3月開催予定の自治体が共催するアニメ関係のイベントが中止となり、シンポジストとしての登壇予定もなくなった。口約束の報酬（1万円）だったが、諦めるしかないのだろうか。

・アニメータＩ　来年度のアニメ学校講師を受任しているが、新型ウイルスが収まらなかった場合、この契約がどうなるのか不安。

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