文化庁による補助金不支給撤回を求める特別決議

 2019年10月14日「あいちトリエンナーレ2019」が75日の会期を経て閉幕を迎えた。
国内最大級の芸術祭の運営をめぐる紆余曲折は、私たち映演労働者が決して看過することのできない、この国の言論表現空間の、異常かつ深刻な現状を示している。

 企画展「表現の不自由展・その後」は、「ガソリン携行缶を持って行く」というテロ予告や脅迫などを含む大量の抗議を受け、8月1日の開幕から3日で中止に追い込まれた。暴力による表現弾圧は断じて許されるものでない。

 あいちトリエンナーレ実行委員会が設置した「あり方検証委員会」はこの間3回の会合を行い、9月25日に委員会としての中間報告案を発表し、「表現の不自由展・その後」について、「条件が整い次第、速やかに再開すべきである」との方向性が示す提言を大村知事に提出した。

 しかしその翌日9月26日、文化庁は「文化資源活用推進事業の補助金審査の結果、補助金適正化法第6条等に基づき、あいちトリエンナーレへの補助金(約7800万円)を全額不交付とする。」と発表し、すでに採択通知が出された補助金を全額不交付とする理由として、「来場者を含め展示会場の安全や事業の円滑な運営を脅かすような重大な事実を認識していたにもかかわらず、それらの事実を申告することなく採択の決定通知を受領した上、補助金交付申請書を提出し、その後の審査段階においても、文化庁から問合せを受けるまでそれらの事実を申告」しなかったことを挙げた。常軌を逸した判断であり、文化芸術基本法の前文で謳われた「文化芸術の礎たる表現の自由の重要性を深く認識し、文化芸術活動を行う者の自主性を尊重する」という理念を当該官庁が真っ向から否定し踏みにじる蛮行である。そして展覧会を妨害する脅迫行為に実質的に加担する検閲行為に他ならない。

 この検閲行為は、国内の文化芸術活動を委縮させ、衰退させるものであり、その後進性を全世界に曝け出す愚行である。

 その後10月8日に「不自由展」は再開され、抽選に定員の22倍超の観覧者が押し寄せたが、しかし菅義偉官房長官や河村たかし名古屋市長らはこの検閲行為を是認、称揚するかのような言動を繰り返している。

 日本国憲法第二十一条は「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」ことを謳い、「 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。」と規定している。

 私たちが働く映画演劇産業は平和と民主主義、言論表現の自由なくしては成立しえない産業である。

 私たち映演労連は言論表現の自由を蹂躙する文化庁の検閲行為に強く抗議し、補助金不支給決定を即刻撤回することを求めるものである。
2019年10月17日
映画演劇労働組合連合会
第68回定期大会

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