「共謀罪」強行採決に抗議し、廃止を求める声明

 2017年6月14日自民公明維新の三党は、「共謀罪」法案の参議院法務委員会での審議・採決を「省略」し、本会議で「中間報告」を行い、15日早朝に採決を強行した。

 私たち映演労連は、この常軌を逸した「究極の強行採決」に対し、満身の怒りを持って強く抗議するものである。法務大臣の支離滅裂な答弁によって法務委員会での審議が空転し、凡そ正常な議会運営とは程遠い状況での、事実上の審議拒否と採決の強行は、議会制民主主義の否定であり立憲政治の破壊に他ならず断じて許されるものではない。

 一方今国会では、一連の森友・加計学園問題が追及され、官邸、内閣府の「忖度」によって、「日本会議」など首相の極右人脈につらなる人物に、多大な便宜・利益の供与が図られたことが明らかとなりつつある。「全体の奉仕者」であるべき公務員は「権力者の下僕」になることを強いられ、内部告発者に対しては一部メディアも加担した人権侵害が行われるなど、首相の「国家権力の私物化」の嫌疑が日増しに深まっている。

 国民・国会を愚弄する今回の蛮行が、国会会期を延長することなく森友・加計学園疑惑への追及を振り払い、事態の幕引きを図るための方策として企てられたのであれば、安倍晋三首相は「憲政史上最も陋劣な宰相」との誹りを免れない。

 政府・与党は「共謀罪」法案を「テロ等準備罪」関連法案と称しているが、法案は「テロ対策」と無関係でありTOC条約の批准要件でもないことは明白である。この間の野党や市民の追及・調査で明らかとなった法案の本質は、国民の内心の自由を侵害する違憲立法だということである。

 国民の大半が何らかの形で参加している市民運動、住民運動、労働運動が警察の恣意的判断で「組織的な威力業務妨害」とみなされ、捜査の対象とされかねず、市民の日常生活が、常に捜査機関の監視下におかれ、戦前の「隣組」のように相互監視・密告社会化する危険性も明らかとなっている。

 さらに法案については国連のプライバシー権に関する特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏から、「プライバシー権や表現の自由が侵害される危険がある」という強い懸念が示されたが、安倍政権はこれに一切答えず「事実誤認」だと感情的に反発し、国際社会に対する民主国家としての信頼も失墜させた。

 日本国憲法の基本理念を踏みにじって「特定秘密保護法」「戦争法」を強行成立させ「戦争する国」へと暴走を続ける安倍政権は、今また対象犯罪が277に及ぶ「共謀罪」によって市民社会に網をかけ、戦争や原発再稼働など、現政権に反対する言論を封殺しようとしている。

 映画・演劇界の先達は「治安維持法」に続く「映画法」などの法律によって自由な表現・創作活動が禁じられ、 国家による厳しい検閲と監視のもとに戦争協力を余儀なくされた。

 私たち映演労連は、前代未聞の強行採決に強く抗議するとともに、内心の自由を侵害し、監視・密告社会を招来する違憲立法「共謀罪」を、全力を挙げて廃止させることを誓うものである。
以上
2017年6月16日
映画演劇労働組合連合会
中央執行委員長 金丸研治

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