原発再稼動撤回、「一体改革」関連法案廃案、
野田内閣退陣を求める声明

 6月8日夕刻、野田佳彦首相は記者会見を開き、「国民生活を守るために、関西電力大飯原子力発電所3・4号機を再稼動すべきというのが自分の考えである」と言明した。
 安全神話への信仰告白と国民への信仰強要のような会見内容に対して、会場で質問を許された報道機関4社の記者は、誰一人として、万が一重大事故が起こった場合の首相の責任を追及することをせず、福島第一原発事故の検証もすまない時期での意見表明に疑問をさしはさむことすらなかった。
 6月15日、大手メディアがオウム真理教指名手配犯逮捕の報に明け暮れる中、「社会保障と税の一体改革」関連法案修正案が民主・自民、公明3党による密室談合によって合意され、一方衆院では「原子力行政の憲法」ともいえる原子力基本法に、核兵器開発・核武装の意図を含むかのような「我が国の安全保障に資する」との目的が追記された原子力規制委員会設置法が即日可決された。
 同日、首相官邸前には脱原発社会の実現を求める1万2千人もの人々が押し寄せ、再稼動は反対の声をあげたが、大半のメディアはこれを報じなかった。翌16日には、福井県知事の官邸訪問を経て「立地自治体の理解が得られた」として関西電力大飯原子力発電所3・4号機再稼動が正式決定され、6月20日には参院で原子力規制委員会設置法が可決成立した。
 6月22日、危機感を募らせ、首相官邸前のデモに参加した市民の数はついに4万5千人に膨れ上がった。6月23日明治公園では、消費税増税、社会保障改悪、TPP参加反対の国民大集会に2万4千人が結集し、6月24日には野田首相の地元船橋で退陣を求めるデモが行われたが、これらの動きも大手メディアはほとんど報じなかった。
 そして6月26日、消費税を10%に引き上げ、社会保障の大改悪を国民に押し付ける8つの「一体改革」関連法案が衆院本会議で強行採決され、民主党の多数・自民党・公明党の3党の賛成で可決された。審議時間、わずか13時間あまりであった。
 一連の法案が参院でも可決成立し、施行されれば、金持ち大企業の税制優遇だけは担保されるが、財政再建は実現せず、内需は凍りつき、被災者や高齢者、貧困層の生活は困窮の極みに達することになるだろう。
 増税分を入場料金に転嫁できない映画館や劇場はたちまち経営が立ち行かなくなり、映画・演劇産業も壊滅的な打撃を蒙ることになるだろう。観客数の減少も予想される。

 もはや国民の怒りは頂点に達している。
 野田首相は就任以来一度たりとも国民のために汗などかかなかった。3年前に「命がけで実行する。」としたマニュフェストを「政治生命をかけて」葬り去り、米国・財界・自公におもねって、被災者・国民の生命・生活をどん底に突き落とす施策の実現に狂奔するのみである。人倫に悖る史上最悪の首相であると言わざるを得ない。国民は「ネバー」「こころから」といったフレーズの反復に自己陶酔した空疎なパフォーマンスに辟易している。
 大手メディアも、権力の意を先取りし、国民を破滅へと誘導する体質から脱却し、国民に寄り添った目線の報道で信頼回復をめざすべきである。
 私たちはこれ以上、生存権の侵害、民主主義への冒涜を許すわけには行かない。
 満身の怒りをもって野田佳彦首相の財務省のロボットのごとき蛮行に抗議するとともに、大飯原発3・4号機再稼動の即時撤回、「一体改革」関連法案廃案、内閣の退陣を強く求めるものである。

2012年6月27日
映画演劇労働組合連合会 第3回中央委員会

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