映画「ザ・コーヴ」の上映を求める声明
和歌山県太地町のイルカ追い込み漁を批判的に描き、米国アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した映画「ザ・コーヴ」(ルイ・シホヨス監督)の公開を予定していた全国24の劇場のうち、東京・大阪の3館が上映中止を決定しました。
この映画については、太地町や太地町漁協などから「事実誤認が多い」などの批判が寄せられ、製作手法についても批判の声が上がっていましたが、東京・大阪の3映画館が上映を中止したのは、公開中止を求める団体などから抗議電話や街宣活動予告が配給社や映画館に殺到したことによる自粛行為だと伝えられています。
これは、言論・表現の自由が保障される民主主義社会において、あってはならない事態です。いま現在、少なくとも東京では映画館で「ザ・コーヴ」を見る機会は失われてしまいました。
私たち映演労連は、昔からの捕鯨の町として知られる太地町の人びとの生活に根ざした主張には耳を傾けるべきだと思っていますが、表現の場を提供する映画館が街宣行動予告などの圧力に屈し、自らの責務を放棄してしまうことに対して、深く憂慮します。街宣行動などをおそれて上映を取りやめ、作品そのものを封印してしまうようなことは、批判を含めて広く議論する機会そのものを奪うことにほかなりません。
評価の分かれる内容であればこそ、公開されることで広く議論の場に供せられるべきです。
上映中止を決定した映画館には、今一度表現の場としての矜持を貫かれるよう再考を求めます。
そして、上映を予定している映画館には、こうした状況に委縮することなく、毅然とした姿勢で表現の場を守るという立場を堅持されることを切望するものです。
2010年6月21日
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