「東京都青少年健全育成条例・改正案」に反対する声明

 東京都は2月24日、石原都知事を提出者として「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例(東京都青少年健全育成条例)」を都議会に提案した。
 この改正案は、アニメ、マンガ、ゲームなどのキャラクターに「非実存青少年」という概念を新たに設け、その「非実存青年」の「性交又は性交類似行為」の描写を規制しようとしている。
 しかしこの「非実存青少年」という定義は、「年齢または服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示、または音声による描写から一八歳未満を認識されるもの」と非常に抽象的であり、具体性に欠けている。容易に拡大解釈が可能であり、恣意的に運用される危険性を持っている。表現の自由を侵害する道具になるおそれが十分にある。またこの新しい概念によって、製作する現場では過剰な自粛が行われる危険性も孕んでいる。
 さらに今回の改正案は、国でも議論中である児童ポルノの「単純所持」を、条例で先行して禁止しようとしている。これは憲法違反の疑いすらある。改正案では「所持してはならない」という規程ではなく、「児童ポルノをみだりに所持しない責務を負う」という規程にしているが、都民一人ひとりに義務を負わせて行政が管理強化しようという意図は変わっていない。
 すでにマンガ界や出版倫理協議会、日本ペンクラブなど各界から強い反対の声があがっている。
 3月都議会でも、こうした曖昧な概念や規制などに対して多くの疑義が出され、6月都議会までの審議継続となった。
 東京都は、「表現者を対象とはしない」「あくまで青少年の閲覧の規制に止まる」ものであるなどと説明しているが、表現に関する規制は、恣意的な運用や拡大解釈がされて、表現の自由を侵害してきた歴史がある。
 すでに多数の都道府県では「青少年健全育成条例」「不健全図書指定制度」などが施行され、性的刺激や暴力的な表現のある著作物は規制がされている。東京都が新たに条例を改正して規制を強化する必要はない。
 世論の多くは児童ポルノの規制を求めていると伝えられているが、それらは著作者や業界等の良心に基づいた自主的規制によって行われるべきものであり、行政などによる規制は表現の自由を規制することに繋がりかねない。
 東京都の「青少年育成条例」改訂は、出版社やコンテンツ製作会社が東京に集中しているという状況からも、その危険性は全国に広がる。
 私たち映演労連はアニメ産業にもかかわっており、その点でもこの問題に無関心ではいられない。
 私たち映演労連は、新たに規制を設ける必要がないうえ、表現の自由をより規制しかねない危険性があり、行政による管理強化が危惧される今回の「東京都青少年育成条例・改正案」に反対する。
 6月都議会では表現の自由を規制や、行政による管理強化などの問題点を冷静かつ慎重に、そして十分に審議し、「東京都青少年育成条例・改正案」を廃案にするよう求めるものである。

2010年4月2日
映画演劇労働組合連合会
中央執行委員長 河内 正行

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